雨の日は会えない、晴れの日は君を想う シネマの世界<第782話>
以来、ジェイク・ギレンホールが、主演した映画は、2001年SFスリラー映画「ドニー・ダーコ」から現在公開中の映画「ノクターナル・アニマルズ」(Nocturnal Animals 夜行動物)まで10数本見たように憶います。
新作「ノクターナル・アニマルズ」(トム・フォード監督・脚本)は、ジェイク・ギレンホールが、主人公の小説家志望の青年と劇中劇の主人公として登場、小説「ノクターナル・アニマルズ」の二人の主人公(二役)を演じていて、共演は、エイミー・アダムス(1974~)、マイケル・シャノン(1974~)、アーロン・テイラー=ジョンソン(1990~)と個性派の名優が、出演しています。
「ノクターナル・アニマルズ」は、ヴェネチア国際映画祭審査員特別賞を受賞した作品ですが、今夜のシネマは、ジェイク・ギレンホールが、2014年映画「ナイトクローラー」で見せた‘壊れてしまった心の狂気(サイコパス)’を彼は、「ノクターナル・アニマルズ」よりその前の心理劇映画「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」(原題「Demolition」 破壊)でのほうが、その狂気により近く、しかも‘壊れていく’心の内側(心因的精神障害の症状)を繊細な演技で見せてくれます。というわけで今夜は、「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」を採り上げたいと思います
私は、「ノクターナル・アニマルズ」も面白いと思いましたが、フォード監督は、ファッションデザイナーでもあるので‘エイミー・アダムス’を着せ替え人形(モデル)のように見立てた演出が、強調され過ぎ、静と動の主人公二役にジェイク・ギレンホール持ち味の‘壊れかけた精神’の演
プロット(構成と脚本)も本筋の主人公と劇中劇の主人公との違和感が、最後まで払拭できず、もう少しミステリー脚色されたスリラー映画にして欲しかったと私は、思います。
その点「雨の日は会えない、晴れの日は君を想う」のほうが、原題「Demolition」 (破壊)のとおりジェイク・ギレンホールは、次第に‘壊れていく’主人公の精神の変化を見事に演じていました。
監督は、カナダの名匠 ジャン=マルク・ヴァレ(1963~、2013年「ダラス・バイヤーズクラブ」、2014年「わたしに 会うまでの1600キロ」)で、ヴァレ監督の演出をヴァレ監督作品の常連である撮影監督のイブ・ベランジェが、ある日突然の交通事故で運転していた妻を亡くし、後遺症の心因的精神(ストレス性パニック)障害により感情を制御できない夫 デイヴィス(ジェイク・ギレンホール)の空虚な心情を包み込むようにやさしく美しい映像で描いていきます。
若き名優ジェイク・ギレンホールへの名監督からのオッファ(出演依頼)は、絶えず現在でも、ポスト・プロダンションの(公開準備をしている)映画が、スウェーデンの名監督 ダニエル・エスピノーサ(1977~)のSF映画「ライフ」、アメリカの鬼才監督 デヴィッド・ゴードン・グリーン(1975~)によるボストン・マラソンのテロ事件で下半身を失くした男性が、モデルの伝記映画「ストロンガー」と私は、一刻も早い公開を心待ちにしています。
(上写真 : 撮影の打合せをするジャン=マルク・ヴァレ監督とジェイク・ギレンホール)