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心の時空

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人間の條件 (前編)  シネマの世界<第762話>

a0212807_20124484.jpg福岡市総合図書館 映像ホール(シネラ)の11月は、日本レアリズモの巨匠小林正樹監督(1916~1996)特集で中でも私が、どうしてももう一度見たいと長年思い続けていた小林正樹監督の代表的な作品で日本レアリズモの最高傑作にして日本映画史不朽の名作「人間の條件」(全上映時間 9時間31分の6部作)も一挙二日連続で上映されるので駆け付けました。
原作は、1956年(昭和31年)から1958年(昭和33年)に発表された作家 五味川純平(1916~1995)の自伝的小説「人間の條件」(全6部作)です。
小林正樹監督自身も満州引揚者であることから先の戦争(注:第2次世界大戦、日本でいう太平洋戦争が、間違いで、太平洋海戦は、主にアメリカを敵国にした第2次世界大戦の一部)で、何百万人と云う日本国民が、満州やシベリアあるいは、a0212807_2013471.jpg東南アジア各地で艱難辛苦の末に死んでいった(戦死したり餓死したり軍に虐殺されたりした)事実を小林監督は、自ら製作・脚本(松山善三、稲垣公一と共同執筆)・監督して自分の信念を貫き徹底したリアリズムにより映画を撮り、3篇(トリコロジー)6部構成の全9時間31分という超長編映画として発表(1959~1961)しました。
映画は、全編モノクロ(白黒)映像ながら見事なまでにリアル、光のコントラストが、美しい映像(撮影監督 宮島
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義勇 1909~1998)です。
軍国主義の凄まじい暗黒の時代(映画の舞台は、昭和18年満州の過酷な鉄鉱石採掘現場から昭和20年冬の
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悲惨なシベリア捕虜収容所まで)にあって“必死に正気の人間であり続けようとする” 主人公の梶(仲代達矢 1932~、撮影当時27歳ながら小林監督を唸らせたほど完璧な演技は必見)の人生を「第1部 純愛編」と「第2部 a0212807_20173047.jpg激怒編」(207分)、「第3部 望郷編」と「第4部 戦雲編」(176分)、「第5部 死の脱出」と「第6部 曠野の彷徨」(188分)の3篇構成で描いています。
6部すべてに出演するのは、主人公の梶を演じた仲代達矢だけですが、梶をこれでもかと襲う地獄のような劣悪な環境と艱難辛苦の中で彼に‘必死に生きようとする力’を与えるのは、妻の美千子を演じる新珠美千代(1930~ 出演時29歳、清楚な姿が美しい)、その他にも当時の錚々たる名優・名女優たち(映画の詳細と出演者は、こちら)が、それぞれ善役・悪役として出演し秀逸な演技で脇をしっかり固め見応え十分、反戦映画どころか娯楽映画としても一級品です。
a0212807_20201127.jpg私は、1979年(昭和54年)にテレビ東京開局15周年記念の特別番組として映画「人間の條件」6部全編上映(CMや休憩入れて12時間の放送)を見ましたが、記憶に残るのは、シベリアの捕虜収容所で日本の敗戦を知った梶が、自分を慕う新兵の「国が滅びますね」と云うセリフに「国って何だね?」と問い返した言葉だけ記憶していました。
真に自由主義者であろうとする梶にとっては、理不尽にして愚劣極まりない「軍」という暴力組織こそが、極悪非a0212807_20205148.jpg道にして諸悪の根源でした。
日ごろあまり映画を見ない方からもし私に‘生涯うち何か映画を一つ見るとして何を薦めますか?’と尋ねられたら「人間の條件」と答えるでしょう。
映画を要約すると昭和18年(終戦の2年前)、主人公の梶は、徴兵免除を条件に満州の鉱山に新妻の美千子と赴任するも中国で強制連行された特殊工人と呼ばれる中国人たちを奴隷のように扱う満州の鉄鉱石採掘現場の憲兵や日本人親方に反発したことで会社から徴兵免除を反故にされ召集a0212807_20213561.jpgされるとソ連との国境最前線に送られました。
梶は、満州陸軍(通称関東軍)の二等兵新兵として古参兵たちの残虐な暴力(シゴキという暴行)に耐え、ソ連軍との戦闘で‘犬死’しない(生き残る)ために降伏、ソ連赤軍に拉致されシベリアの捕虜収容所に連行されました。
捕虜収容所でも梶は、共産主義国家ソ連へ、同胞のシベリア捕虜収容所兵士へ人道的な扱いを求めますが、a0212807_20241888.jpg独裁者スターリンの肖像のかかるシベリアの捕虜収容所もまた極悪非道な「軍」組織で非人道的な扱いでした。
絶望した梶は、極寒のシベリア捕虜収容所から逃亡、妻美千子のところへ帰るため荒涼たるシベリアの雪原を歩き続け妻美千子を想いながら力尽きて倒れ死んでいきます。 (後編に続く)
by blues_rock | 2017-11-07 00:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)