ラビング 愛という名のふたり シネマの世界<第772話>
今年(2017年)の年明けから映画のテーマや時代設定は、それぞれ異なるものの「ラビング 愛という名のふたり」、「ニュートン・ナイト」、「夜に生きる(リブ・バイ・ナイト)」と、白人と黒人(や有色人種)との友情・愛・結婚を描いた新作映画が、次々に日本公開されています。
「ラビング」は、気鋭の若手監督ジェフ・ニコルズ (1978~、2012年「テイク・シェルター」、2014年「MUD マッド」、2016年「ミッドナイト・スペシャル」すべて秀作)の最新作です。
今からわずか60年前、1958年のある夜、ラビング夫妻は、自宅寝室で睡眠中に突然侵入して来た保安官に逮捕されました。
逮捕の理由は、“二人が結婚したこと”にありました。
当時、アメリカ南部のほとんどの州で異人種間の結婚が、禁じられているなか、バージニア州のレンガ職人リチャード(ジョエル・エドガートン 1974~)は、白人であるにも関わらず幼馴染で黒人の恋人 ミルドレッド(ルース・ネッガ 1982~)と州外の異人種間の結婚が、認められているワシントンD.C.で結婚しました。
しかし、故郷のバージニア州に帰ると異人種間の結婚したため犯罪者として逮捕されました。
愛し合う二人にとって別れることなど考えられず二人は、家族のいる故郷バージニア州を捨てワシントンD.C.で暮らすことにしました。
しかし、子供3人に恵まれたものの望郷の念断ちがたく友人のアドバイスもありミルドレッドは、人種差別撤廃の公民権を推進するロバート・ケネディ司法長官に「愛する夫リチャードと生まれ故郷のバージニア州で夫婦一緒に暮らしたい」と嘆願の手紙を書きました。
1967年6月12日、この驚くべき前近代的な「結婚は犯罪」の悪法は、アメリカ合衆国連邦最高裁判所によって廃
それを記念して毎年6月12日は、‘Loving Day’という記念日になりました。
この実話に感銘を受けた名優コリン・ファースが、プロデューサーを買って出てジェフ・ニコルズ監督により映画化されました。
ニコルズ監督は、ただ只管(ひたすら)自分たちの愛を貫いたラビング夫妻の慎ましくも美しい人生に敬意を表し慈しむかのように丁寧に撮っています。