ロウダウン シネマの世界<第766話>
監督は、ジャズを中心としたドキュメンタリー映画監督のジェフ・プライス(1961~)、脚本が、ジョー・アルバニーの愛娘で作家となったエイミー・ジョー・アルバニー(1962~) ‥ 当時前衛的なジャズであったビバップ(即興演奏)のジャズピアニストでジャンキー(ヘロイン依存症)でもあった父 ジョー・アルバニーのピアノ演奏(ビバップジャズ)を娘のエイミーは、幼いころからいつもとなりで聴いていました。
その後、作家となったエイミーは、2003年父 ジョー・アルバニーについての伝記「Low Down(内輪話)」を上梓、その原作を元に幼いころからジャンキーの父ジョーと艱難辛苦を共にしてきた娘の視点で脚本が、書かれているので彼女の喜怒哀楽のリアリティは、半端じゃありません。
1970年代のハリウッド、娘のエイミーを溺愛するもヘロインなしでは生きられず、刑務所との間を行き来する哀れなジャズピアニストの父 ジョー・アルバニー、孤独を癒しに家出したアルコール依存症の母にエイミーが、会いに行っても泥酔している母は、ひどい言葉で思春期の娘を侮辱し聞き捨てならない暴言を吐いて追い返します。
両親に頼れない孫のエイミーをやさしく受け入れていたのは、祖母と父と同じような麻薬中毒のミュージシャンたち、売春婦、ポルノ映画を生業にする大人たちでした。
ジャンキーのジャズピアニスト ジョー・アルバニーを名優のジョン・ホークス(1959~、2012年「セッションズ」は、忘れられない名演)、娘エイミーに子役を脱したエル・ファニング(1998~)、エイミーの祖母をベテラン女優のグレン・クローズ(1947~、1982年「ガープの世界」での看護婦ジェニーは強烈でした)、ジョーの友人のトランペッターにロックバンド「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ」のフリー(1962~、2017年「ベイビー・ドライバー」に出演)、フリーは、製作総指揮も担っています。
役者ぞろいの中でジャンキーのジャズピアニストジョーを演じたジョン・ホークスの秀逸な演技は、もちろんのこと必見は、何と云ってもエイミーを演じた当時16歳のエル・ファニングのすばらしさ!です。
2016年18歳で主演したトップモデル役の「ネオン・デーモン」は、ニコラス・ウィンディング・レフン監督のミスキャスト、世界の映画ファンと評論家たちを唸らせようと仕掛けた映像作家としてのレフンマジックでしたが、ダークファンタジーは、エル・ファニングに似合いません。
天才子役ダコタ・ファニング(1994~)を姉にもち2001年2歳8か月のとき「アイ・アム・サム」でスクリーン・デビュー、8歳のとき「バベル」(2006)、10歳で「ベンジャミン・バトン 数奇な人生」 (2008)、13歳のとき「Virginia/ヴァージニア」 (2011) で主演と生まれながらの女優としてキャリアを積んでいます。
可愛い少女、キュートな娘であったエル・ファニングも今や19歳にして、身長も175㌢と大柄で美貌スタイルともに抜群の カメラ映りの好い素材(女優)となりました。
後は、良い脚本と優秀な監督にさえ恵まれれば、名実とも確実に大型女優に成長していく若手女優の一人であると私は、この映画「ロウダウン」で演じたエイミーをみて思いました。
質の高い映画なのに日本では、劇場未公開、先日現在公開中の日本映画の秀作「三度目の殺人」を見たばかりで、少数とは云え、ちゃんとした映画を努力して撮っている人たちもいるのだなと思い、十把一絡げにして日本映画産業の体たらくについてウダウダ書くのは、もう止め(諦めること)にしました。
「ロウダウン」は、衛星映画でオンエアされただけなので、まだご覧になっていないジャズファン、エル・ファニング ファンの方々には、自信をもってお薦めいたします。