ムーンライト(後編) シネマの世界<第713話>
そして、映画のもう一つの見どころは、映像の美しさです。
撮影監督ジェイムズ・ラクストンが、撮った映像をポストプロダクションでカラーリストのアレックス・ビッケル(1982~)は、「月の光の下で黒人の少年が、青く光って見える」トーンに色彩加工、そのため登場人物(全員黒人)の肌が、ブロンズ彫刻のように美しく
音楽(サウンドトラック)もまた秀逸です。
音楽監督のニコラス・ブリテル(1980~)は、同じメロディをリトルからシャロンそしてブラックと次第に成長するごとに変奏(アレンジ)し、その姿が、変わってもアイデンティティは、変わらないことを音楽でも表現しています。
ピアノとヴァイオリンのアンサンブルもすばらしくシャロンの心が、揺れるときヴァイオリンの音色は、トレモロで震え、彼の心の動きと哀感を見事に表現しています。
「ムーンライト」の脚本に惹かれたブラッド・ピット(1963~)が、製作総指揮を担っています。
ゲイの映画で私の記憶に残るのは、1997年のウォン・カーウァイ監督作品「ブエノスアイレス」、2002年のトッド・ヘインズ監督作品「エデンより彼方に」、2006年のアン・リー監督作品「ブロークバック・マウンテン」、2015年
「ムーンライト」は、ゲイ(LGBT)を主題とした映画として初めてアカデミー賞最優秀作品賞に選ばれました。
人種と性に対し偏狭な暴言を恥ずかしげもなく繰り返すゲスな大統領のいるアメリカで映画人たち(6、500名のアカデミー会員)は、「ムーンライト」をアカデミー賞の最優秀作品賞に選び全世界の映画ファンとアメリカの有権者に「人の品性とは、何か」という品格あるメッセージを送りました。