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心の時空

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三度目の殺人  シネマの世界<第745話>

是枝裕和監督(1962~)の最新作(原案・監督・脚本・編集)「三度目の殺人」を封切り初日に見ました。
是枝監督作品は、1995年の長編映画監督デビュー作品「幻の光」からずっと見て来た是枝監督ファンとしてこのところ家族を主題とした映画ばかりが、続き私は、正直少し欲求不満気味でした。
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そんなこともあり是枝監督新のダークな法廷心理劇映画「三度目の殺人」は、私を大いに満足させました。
私が、これまで見た法廷劇の名作と異なり是枝監督の「三度目の殺人」は、謎解きをしないで結論も出さず真実が、明かされないまま終わる心理サスペンスの法廷劇です。
a0212807_751871.jpg映画のプロットは、1950年の日本映画「羅生門」(ヴェネツィア国際映画祭グランプリ受賞作品)と同じ‘藪の中’、つまり三度目の殺人を犯した容疑者の供述(犯行の物的証拠が、なく自供をころころ変える推定殺人犯)に振り回される弁護士たち、裁判の数少ない情況証拠の真相に深く関わる被害者の妻と娘二人の食い違う証言、自白調書をもとに死刑を求刑したい検察官、裁判をさっさ終えたい裁判長など個人の思惑が、交錯しながら映画は、最後まで容疑者の底知れぬ心の闇に振りa0212807_7534197.jpg回される弁護士を緊張感たっぷり描いています。
是枝監督は、気心の知れた常連製作スタッフ、撮影監督の瀧本幹也(1974~)始め美術監督の種田陽平、照明の藤井稔恭と1950年代の犯罪映画の特徴であった「光と影」例えば、1952年日本公開のイギリス映画「第三の男」など、当時の名作映画が、表現した美しい陰影を追求、全編ダークな色調にあって室内に射す光と影のコントラストは、抜群な心理サスペンス効果を生み出しました。
a0212807_7542071.jpg是枝監督たっての要請で音楽を担ったイタリアの作曲家ルドヴィコ・エイナウディ(1955~ 2011年フランス映画「最強のふたり」の音楽監督)の音楽も秀逸、彼は、撮りあがった映像を見ながら作曲したそうでピアノの淡々とした静かな旋律が、登場人物の情感を見事に表現していました。
是枝監督は、ヨーロッパの映画評論家から‘成瀬巳喜男のフィルム’のようだと言われたことを大変喜んでいましたが、成瀬監督の名作「浮雲」を思い浮かべると‘映画の判断は、見る人に任せる’という成瀬監督作品への
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オマージュが、感じられました。
「三度目の殺人」は、上質な心理サスペンス法廷劇映画ながら同じヴェネツィア国際映画祭でグランプリ受賞した黒澤明監督作品「羅生門」が、あるので今回無冠だったのは、仕方ないことかもしれません。
a0212807_803446.jpg三度目の殺人を犯した容疑者三隅を演じる希代の名優 役所広司(1956~)ならびに裁判に勝つために真実は要らない、さらに依頼人(殺人容疑者)への共感も理解も不要と断言するクールな弁護士重盛を演じる福山雅治(1969~)の表情をシネマスコープのスクリーンいっぱいにエクストリーム・クローズアップした映像や接見室のガラス越しに対面する二人をツーショットで撮った画面は、この映画の秀逸な見どころです。
容疑者の三隅は、決して口に出さないものの、暗い翳(かげ)のある足の悪い被害者の娘咲江(広瀬すず)に幸a0212807_823236.jpg薄い自分の娘と重ね合わせ、彼女が、弁護士重盛の調べにためらいながら答えた「殺された父は、長年私に性的暴行(レイプ)をしてきた人でなしで、三隅さんが、私を助けてくれた」との証言のように咲江の代わり天誅を下したのか、三隅は、弁護士に無断で週刊誌の取材に応じ保険金8千万円の掛けられた被害者を週刊誌スクープ記事のように妻(斎藤由美)の依頼で殺したのか、さらに裁判が、佳境に入ると突然「本当は、殺していない」と主張し始め供述(動機)を二転三転、ころころa0212807_83215.jpg変える三隅にイラ立つ裁判長(井上肇)や検察官(市川実日子)、その度に奔走する新人弁護士(軒弁の)川島(満島真之介)など演技の上手い出演者たちが、三度目の殺人容疑者三隅の役所広司と初めて真相を知りたいと思う弁護士重盛の福山雅治をしっかり支えています。
弁護士の重盛が、容疑者の三隅を称して、ぽつりと独り言で‘空っぽの器’と云うシーンは、裁判所(司法システム)が、加害者と被害者の利害を調整する場所であり、その結果としての罪と罰だけは、存在することを意味しa0212807_855982.jpgていると思います。
裁判は、罪の真相を究明する場所でなく、裁判に真相究明も必要なく必要ともされないという現実の不条理さを是枝監督(左と上写真 3枚、撮影中の是枝監督)が、最新作の法廷心理劇映画「三度目の殺人」で見事に表現し訴えていました。
by blues_rock | 2017-09-13 09:13 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)