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心の時空

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夜明けの祈り  シネマの世界<第741話>

先月、福岡で開催された‘フランス映画祭2017’の最終日にゲストとして登場、クロージング作品「呼吸 ~ 友情と破壊」に主演したフランス新進気鋭の女優 ルー・ドゥ・ラージュ(1990~)の最新作「夜明けの祈り」(原題「Les
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innocentes」罪なき者たち)を見ました。
映画は、1945年のポーランド、ワルシャワから遠く離れた女子修道院が、舞台の、息苦しくも‘人は、人としてし
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か生きられない’ことを教えてくれます。
ルー・ドゥ・ラージュが、演じる主人公のフランス人女性医師マチルドは、第2次世界大戦末期、ポーランドにいるa0212807_234645.jpgフランス軍負傷兵救済のために派遣された実在の人物でフランス赤十字の医師 マドレーヌ・ポーリアックが、モデルです。
ポーリアック医師は、ポーランドで自分の従事した医療活動を克明に「治療の記録」として残しており、これを読んだフランスの名監督 アンヌ・フォンテーヌ(1959~)が、女性の立場から歴史から忘れ去られようとしているポーリアック医師の書き残a0212807_2352654.jpgした「治療の記録」(理不尽な性暴力による悲劇)を「夜明けの祈り」(Les innocents 罪なき者たち」として映画化、今でも世界中の至るところで起きている性暴力を告発し糾弾しています。
この映画の特徴は、‘女性’が、主人公であること、男性は、善人も悪人もすべて脇役でしかありません。
a0212807_2383675.jpg製作スタッフもアンヌ・フォンテーヌ監督(と脚本)始め 撮影監督のカロリーヌ・シャンプティエ(1954~ 2010年「神々と男たち」、2012年「ハンナ・アーレント」)、編集のアネット・デュテルトル(1961~)と女性中心、キャストもまた主人公のフランス人医師マチルド役のルー・ドゥ・ラージュ(1990~)、ポーランド人の修道女シスター・マリア役のアガタ・ブゼク(1976~ 2016年「イa0212807_2393781.jpgレブン・ミニッツ」)、修道院長マザー・オレスカ役のアガタ・クレシャ(1971~)、他に十数人の若いポーランド人修道女たちと「夜明けの祈り」は、ほとんど女性たちの手による映画と言って良いでしょう。
映画のプロットは、1945年のポーランド、聖母マリアに憧れ処女のまま修道女となり神に祈る毎日をおくるカトリック系女子修道院に戦争末期のある日3回にわたり、敵a0212807_23104236.jpg兵捜索と告げてソ連軍の小隊が、修道院に押し入り修道女全員を凌辱(レイプ)しました。
無宗教(共産主義は宗教を否定)の野蛮なソ連兵からすれば、修道女たちも一人の女でしかなく、突然何が起きたのか分からないままレイプされた修道女のうち7人の修道女が、妊娠しました。
a0212807_23112032.jpgおぞましい性犯罪の犠牲になり悪夢を見て怯え身を寄せ合い、憎むことも恨むこともしないで、ただ神に祈り赦しを請う修道女たちでしたが、1945年の冬12月、臨月となった7人の若い修道女たちが、いました。
ポーランドのフランス赤十字施設で医療活動に従事するフランス人医師のマチルドのもとにポーランド人のシスター(アガタ・ブゼク)が、沈痛な面持ちで現われ‘私たちa0212807_2312577.jpgを助けて欲しい’と懇願しました。
寝る間もないほど多忙な毎日のマチルドは、ポーランド赤十字かソ連の赤十字施設に行くようシスターに告げますが、シスターは、頑なに拒否し雪の降り積もる極寒の森でひたすら祈り続けていました。
a0212807_23133739.jpg尋常ならざるその姿に心動かされたマチルドは、赤十字のジープで遠く離れた修道院を密かに訪ねました。
そこでマチルドが、目にしたものは、戦争末期ポーランドに侵攻したソ連兵によるレイプで身ごもった7人の修道女が、出産を控えあまりにも過酷な現実と残酷極まりない信仰の狭間で極限の苦しみにあえぐ姿でした。
a0212807_23141064.jpg修道女たちを救うため激務の間を縫い睡眠時間を削って修道院に通うマチルドですが、困難は、次々に彼女のうえに降り注ぎました。
息苦しくなるようなシーンの連続ながら無神論者の医師 マチルドが、わが身の危険も顧みずに修道女の宿した尊い命を救おうとする使命感は、やがて孤立無援の修道女たちにとり唯一の希望になりました。
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やがてマチルドと修道女たちは、宗教や信仰を超え人と人との強い信頼で結ばれました。
対照的なのが、教会の権威と修道院を守るため、母性を自覚し始めた若い修道女から赤子を奪い、秘かに修a0212807_23172731.jpg道院から遠い極寒の湖畔にある十字架の前に置き去りにして殺す修道院長マザー・オレスカです。
オレスカ修道院長の偽善と傲慢さは、保身しか頭になく、神の名を平然と騙(かた)り 自分の判断が、神(主イエス)の判断でキリスト教の正義であると他者に無理強いするところにあります。 (上と下写真 : 撮影の打合せをするアンヌ・フォンテーヌ監督)
a0212807_23251130.jpgこの傲慢さと偽善は、すべての宗教の根底にあり、これに民族と利権が、絡むので 宗派間の諍いや宗教戦争は、未来永劫なくならないでしょう。
(付録) よかったら「イワシの頭も信心」も読んでいただけると光栄です。
by blues_rock | 2017-09-01 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)