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フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>

正にフランス映画の名匠と呼ぶにふさわしい異才ジャック・オーディアール監督(1952~)の映画を私が、初めて見たのは、2009年作品「預言者」(原題 Un prophète)でした。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_2353842.jpgこの映画「預言者」が、醸し出す特異なテンション(主人公のアナーキーな雰囲気、)に惹き込まれ、2005年の「真夜中のピアニスト」(原題 De battre mon coeur s'est arête)以降の作品 ~ 2012年の「君と歩く世界」(原題 De rouille et d'os)、2015年の「ディーパンの闘い」(原題 Dheepan)とオーディアール監督作品を見ましたが、いずれもお勧めしたい秀作映画です。
オーディアール監督演出の特長である‘精神の表情’を撮るカメラも抜群で、名撮影監督ステファーヌ・フォンテーヌ(「ディーパンの闘い」は、女性撮影監督エポニーヌ・モマンソー 1985~)は、オーディアール監督の演出を‘どう撮れば良いのか’先刻承知といった感フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_20574279.jpg性で演じる俳優(女優)たちの感情の機微(表情のニュアンス)を秀逸な映像で撮影しています。
併せて、どの映画の出演者たちも個性豊かで抜群の演技力をもつ俳優(女優)ばかり‥「映画の質は、監督、脚本、出演者で決まる」は、私の持論ながらカメラもふくめオーディアール監督の作品が、すべて秀作なのは、うなずけます。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_20582435.jpg2009年作品の「預言者」は、カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞、人種対立の激しい刑務所に入所した新入り受刑者で無学な19歳のアラブ系フランス人青年マリクが、命の危険にさらされながら獄中を生き延び、次第に権力を握っていく過程を描いています。
主人公のアラブ系青年マリクを熱演したのは、当時無名の若手俳優タハール・ラヒム(1981~)で、この映画で一躍有名になりました。
コルシカ系ギャングのボスを演じたのが、オーディアール監督作品に無くてはならないベテラン俳優ニエル・アレストリュプ(1949~)でいつもながらの風格ある渋い演技で存在感を出していました。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_20585318.jpg「預言者」の前作が、2005年作品の「真夜中のピアニスト」で、この映画(こちらが先ながら)にもニエル・アレストリュプは、出演し怪しげな不動産ブローカー業を営む主人公トム(ロマン・デュリス 1974~ 1997年映画「ドーベルマン」に出演)の父親役で出演、フランスに暗躍するロシア人悪徳資産家の債務に苦しむ父のロベールを好演しています。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_20593177.jpgトムは、子供のころに挫折したピアニストへの夢が、ふとしたきっかけで目覚め、仕事もそっちのけでのめり込み、狂気と紙一重への精神状態に陥っていく青年トムをロマン・デュリスが、熱演しています。
2012年作品「君と歩く世界」(原題の De rouille et d'os は「錆と骨」という意味)の見どころは、今やフランスを代表する名女優になったマリオン・コティヤール(1975~)と同様にベルギーを代表する名優であるマティアス・スーナールツ(1977~ 「闇を生きる男」主演、「クライム・ヒート」主演、「リリーのすべて」出演)二人の秀逸な演技です。
マリオン・コティヤール演じるシャチの花形調教師であったステファニーは、ショーの最中に事故に遭い両足膝フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_212152.jpgから下を切断、精神的な喪失感から生きる気力を失くしていました。
マティアス・スーナールツ演じる失業中のシングルファーザーアリは、人間的な欲望を一切隠さずそして何も考えない粗野な行動が、親戚縁者たちから疎まれていました。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_2133153.jpgそんな二人が、出遭い、殺伐とした社会と人間関係の中でステファニーとアリは、剥き出しの感情をぶつけ合い、そんな二人を包み込む陽の光の美しい映像が、瑞々しい生命の躍動感を際立たせています。
まわりの人びとは、両足に義足を着け松葉杖が、ないと歩けない失意のステファニーを憐れむような目で見ますが、アリは、彼女に同情することも哀れむこともせず、「両脚がない? それがどうした!?」 とばかりステファニーを口説き、外に連れ出し、セックスし終わると「セックスしたくなったらフランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_21184657.jpgオレを呼んでくれ」とさっさと帰ります。
ステファニーは、そんなアリに愛想尽かしますが、粗野ながら孤独なアリは、号泣しながら自分の気持ちを剥き出しにして「見捨てないでくれ」とステファニーにすがりつきます。
オーディアール監督の最新作2015年作品「ディーパンの闘い」については、こちら をご覧いただけると光栄です。
フランス映画の名匠ジャック・オーディアール監督  シネマの世界<第712話>_a0212807_2134654.jpg

by blues_rock | 2017-04-04 04:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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