ハイドリヒを撃て! シネマの世界<第757話>
第一次世界大戦、第二次世界大戦が、あれば、いずれ第三次 ‥ やがて第四次と続き、そして、第五次世界大戦と、そのころすでに核による放射能で全人類が、滅亡しているでしょうね。
さて、今日ご紹介するチェコ・イギリス・フランス共同製作の最新作「ハイドリヒを撃て!」(原題「Anthropoid」類人猿)は、1942年ナチスドイツ占領下のチェコ(プラハ)で起きたナチスNO.3のナチス親衛隊大将(SS長官)ラインハルト・ハイドリヒ暗殺事件の史実をリアルに再現(セピア・カラーの映像が実録ドキュメントフィルムのようで秀逸)しているので、映画を見ている者も75年前1942年のプラハへタイムスリップし、ハイドリヒ暗殺事件を目撃しているようでロンドンのチェコ亡命政府から、プラハに送り込まれた 7人の暗殺小隊の恐怖と極度の緊張感に同期しラスト30分 ‥ ハイドリッヒを襲撃し暗殺したあとカトリック教会に立て篭もるもゲシュタポの残忍な拷問によりレジスタンスの若者が自白、血の報復に重武装した700人のナチス軍に包囲された教会は、壮絶かつ凄惨な攻撃を受け彼ら全員が、戦死、5千人を超えるプラハ市民も見せしめに殺戮されました。
この30分にも及ぶ戦闘シーンで使用された銃器類すべて当時の武器を再現していて、プラハの街並み、衣装・家具調度類などこの映画のライン・プロデューサー、プロダンション・デザインの製作スタッフの気合も並大抵ではありません。
この映画の製作・脚本・監督・撮影とすべてを束ねたのが、イギリスの写真家・映画監督 ショーン・エリス(1970~)、彼は、構想15年、歴史的事実を綿密にリサーチし脚本を書き監督そして自らカメラを抱え、オールプラハロケーションで撮影(映像にリアリティが、あり カメラワークと併せ実にすばらしい!)、いやがおうにもエリス監督の情熱と執念が、暗雲立ち込める世界の中で平和ボケした第三次世界大戦前夜に暮らす私たちの頭を覚醒させること請け合います。
映画の原題「Anthropoid」(類人猿)は、このラインハルト・ハイドリヒ暗殺計画の暗号名「エンスラポイド(類
人猿)作戦」に由来しています。
主人公のヨゼフにアイルランドの俳優 キリアン・マーフィ(1976~ 2006年秀作「麦の穂をゆらす風」主演)、同志のヤンをジェイミー・ドーナン(1982~)、この二人をそれぞれ支援するプラハの女性マリーにフランスの女優 シャルロット・ル・ボン(1985~ 2014年「マダム・マロリーと魔法のスパイス」)、もう一人の女性レンカをチェコの女優 アニャ・ガイスレロヴァ(1976~ 2011年「幸福の罪」)の二人が、緊張感あふれる演技で好演しています。
(右写真 : 暗殺されるハイドリッヒを演じたドイツの俳優・映画監督 デトルフ・ボテ そっくり!)
祖国を侵略したナチスドイツに抵抗するレジスタンスで極秘「エンスラポイド作戦(ハイドリッヒ暗殺計画)」に決死の覚悟で協力したプラハ市民が、ゲシュタポに追いつめられ拷問で仲間を裏切らないよう‘青酸カリ’を服毒して自ら口封じするさまは、如何なる権力(暴力装置=軍事政権)も悪であるとことを示しています。
ほら、日本列島の西にある二つの軍事国家をご覧いただければ、悪しきナチスドイツ(とゲシュタポ)の亡霊が、いまだ彷徨い跋扈していることが、分かるでしょう。 (上写真 : 自らカメラを抱えて監督するエリス監督)