アスファルト シネマの世界<第750話>
この映画の良さも 面白さも 文字では、説明できない、映像を見ないと分からない 映画ならでは、の作品です。
映画は、冒頭、団地の老朽化したエレベーター取り換えを討議する住民集会から始まります。
2階に住まうサエない中年独身男(ギュウタヴ・ケルヴァン 1962~)は、相応の経費負担が、イヤでただ1人反対しました。
経費負担しない住民は、新エレベーターの使用を禁止するというルールで取り換えが、決まりました。
数日後、男は、大ケガをして車イス生活となりエレベーターが、要るようになりました。
それからの彼の姑息なエレベーター使用が、笑えます。
ある夜、彼は、団地を抜け出し近くの病院で夜勤中の孤独な看護婦(バレリア・ブルーニ・テデスキ 1964~)と知り合いになりました。
団地に1人の落ちぶれた女優(イザベル・ユペール 1953~)が、引っ越して来ました。
同じ階に住む、いつも母親不在の孤独な少年(ジュール・ベンシェトリ 1998~)は、引っ越してきたばかりの女優を何かと手助けしながら部屋に入り彼女が、出演した映画のビデオを見せて欲しいと強請(ねだ)りました。
そんなある日、団地の屋上にNASAの宇宙飛行士(マイケル・ピット 1981~)が、トラブルで不時着、服役中の息子をもつアルジェリア移民の老女(タサディット・マンディ)に助けられました。
宇宙飛行士は、フランス語が、話せず、アルジェリア移民の老女は、まったく英語を理解できませんでした。
映画は、3組6人の男女が、織りなすコミカルにしてシリアスそしてペーソスに満ちた人生模様をセリフの少ないワンカットワンシーンの長回しで描いていきます。
ベンシェトリ監督が、演出するユニークなキャラクター6人の登場人物を配役の俳優と女優たちは、味わい深く演じています。
とくにフランスの名女優 イザベル・ユペールを相手に演じたベンシェトリ監督の息子で名優 ジャン=ルイ・トランティニャン(1930~、1966年「男と女」、2012年「愛、アムール」は名作)の孫にして当年まだ十代の新人俳優 ジュール・ベンシェトリが、存在感のある見事な演技を見せ、今後どんなに映画に出演するのか、楽しみです。