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心の時空

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神のゆらぎ  シネマの世界<第675話>

数多いる若手俳優の中でも類い稀な心理表現能力をもつカナダの名優グザヴィエ・ドラン(1989~、現在26歳)が、出演しているので見た2014年のカナダ映画「神のゆらぎ」は、“神の存在(在・不在)”を描いた秀作です。
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「神のゆらぎ」(Miraculum ラテン語で「奇跡」)は、カナダのダニエル・グルー監督(1967~)が、2014年に撮った作品(2016年日本公開)で、人間の生き死は、‘神の意志’によるものなのか、‘個人の選択(による偶然)’なのa0212807_20543787.jpgか、映画は、“神の不在”を暗示しながらも見る者の心に問いかけていきます。
マーティン・スコセッシ監督の新作「沈黙/サイレンス」では、隠れキリシタンの信仰(殉教)と踏み絵(棄教)を描くことで“神の沈黙”を表現しました。
グルー監督の「神のゆらぎ」は、カルト教団 エホバの証人の信仰(輸血の拒否)による必然死と飛行機墜落事故による偶然死(1人だけ瀕死で生存したa0212807_2132710.jpg奇跡)について3組の男女と1人の男という複数の人間の現在と過去をテンポ良いショットで交錯させながら、それぞれの人生を群像劇として描きました。
バラバラに展開していたそれぞれの複雑な人生を一つの物語に収斂させていくガブリエル・サブーランの見事な脚本(麻薬の運び屋として出演)とグルー監督の演出の手腕は、秀逸です。
a0212807_2135662.jpgグザヴィエ・ドラン演じる熱心なエホバの証人信者エティエンヌは、輸血しなければ生きられない末期の白血病患者ですが、熱心な信者で信仰に殉じ輸血を拒否、一切の治療を拒み苦しみながら死んでいきます。
エティエンヌの恋人で看護師のジュリー(マリリン・キャストンゲ 1982~ 現実と信仰との間で苦悩し葛藤する心理表現がすばらしい)もエホバの証人の信者ですが、飛行機墜落a0212807_21222544.jpg事故現場の惨状と奇跡的に1人だけ助かった瀕死の生存者を看護するうちにジュリーは、愛する者の生命を何としても救いたいと思う自分の気持ち(現実)と信仰に殉じ死を神の意志とする教義に迷い葛藤していました。
ある日、ジュリーは、宗教の勧誘に行った老紳士から「飛行機が、落ちるのは、万能の神が、存在しないからだ。」と諭され涙しました。
a0212807_21270100.jpgエホバの証人の信者ジュリーは、病院の集中治療室で奇跡的に生きている飛行機事故生存者と同じ血液型なので病院からの緊急輸血の要請を受けていましたが、拒否していました。
a0212807_21372888.pngジュリーは、自分の血を輸血しないと死ぬしかない目の前の患者のために同僚信者の制止を振り切り、決心したように(自分の意思で)輸血、さらに激しく咳きこみ吐血し苦しむ末期白血病の恋人エティエンヌを説得して病院に連れて行こうとしますが、彼女から輸血したことを聞かされたエティエンヌは、愛するジュリーをも拒否し別れて二日後に亡くなりました。
a0212807_213814.pngジュリーの表情は、終始冷たく感情を表に出さず「神は、人間に見向きもしない。 最愛の恋人すら奪う。 それが、神の意思ならば、神はいらない。」とその表情が、語っているようでした。
a0212807_21385968.jpg映画は、前述したとおりエホバの証人信者の恋人二人を軸にして、墜落するキューバ行き飛行機の出発前(過去)ならびに墜落事故後(現在)の3組の男女と1人の男をクロスカッティング(同時進行)しながら展開していきます。
a0212807_21393633.jpg狂ったように老いらくの恋(性愛)をするカジノで働く初老のバーテンダーとクロークの老女、お互い倦怠しうんざりしている中年のギャンブル狂の夫とアルコール依存症の妻、取り返しのつかない過去の罪(姪への性的虐待)を償う金のために麻薬の運び屋をする男が、それぞれ飛行機墜落前の空港と墜落後の病院で偶然出遭っていきます。
グザヴィエ・ドランが、登場するシーンは、さほど多くありませんが、「エレファント・ソング」で見せた感情表現(表a0212807_21403137.jpg情)の秀逸した上手さは、今回も随所で見られます。
グザヴィエ・ドランの他は、私の知らないキャスト(俳優・女優たち)てしたが、それぞれ役に嵌まった個性的な演技は、リアルですばらしくカナダ映画界の層の厚さを感じました。
a0212807_21405629.jpgとくに群像劇の中心となる看護師のジュリーを演じたマリリン・キャストンゲは、名優グザヴィエ・ドランとのカラミもすばらしく、彼女のドラン監督演出による新作を見てみたいと強く思いました。
by blues_rock | 2017-02-14 00:14 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)