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心の時空

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ハロルドが笑うその日まで  シネマの世界<第662話>

a0212807_0272597.jpg2016年日本公開のノルウェー映画「ハロルドが笑うその日まで」は、ノルウェー版ロード・ムービ―で、監督(脚本)のグンナル・ビケネ(1966~)が、人間社会に向けるシニカルな視線と映画に登場する人物を見つめるヒューマンな眼差しは、相反するようにも思えますが、ビケネ監督は、映画に登場する人たちすべてに共通する人生のペーソスをウィットに富んだ会話とユーモアあふれる演出で見せてくれます。
映画の主人公、初老の家具店主ハロルド(ノルウェーの名優ビョルン・スンクェスト 1948~)は、品質重視で伝統的なノルウェー家具職人でした。
a0212807_0282499.jpg自分の店(工房)の前に隣国スウェーデンの世界的家具小売チェーン店「イケア」が、開店したことによりハロルドの手作り家具店は、立ち行かなくなりました。
糟糠の妻は、認知症を患い長年連れ添った夫のハロルドすら分からなくなりました。
夫のハロルドに「アa0212807_0293468.jpgホンダラ!」と悪態をつき、介護人の女性には、「アバスレ!」と暴言を吐く始末、やがて妻が、亡くなり、ハロルドは、タブロイド新聞の記者をしている一人息子に訃報を伝えようと彼の家族を訪ねますが、どこかトンチンカンな息子は、すでに新聞社をクビになり、愛想尽かした妻(と子供2人)が、家を出ていくところでした。
a0212807_0383528.jpg万事何ごとにも後ろ向きで自分の不遇を社会のせいにして逆恨みをするダークサイドのハロルドと途中から登場し何ごとにも前向きで謙虚を自分のポリシーにして「イケア」を世界的な企業にしたライトサイドのイケア創業者カンプラード(ノルウェーの俳優ビヨルン・グラナート a0212807_1233554.jpg1946~ 実在のカンプラードご本人そっくり)との真逆な二人のやり取り(ぶつかり合い)が、ユーモラスでウィットに富み実にコミカルで、この映画「ハロルドが笑うその日まで」の見どころです。
自分の人生が、上手くいかないのを「イケア」のせいにし怒りを募らせたハロa0212807_124743.jpgルドは、イケア創業者のカンプラードに復讐しようとイケアのあるスウェーデンに向かいました。
雪道で寝ているところをワケアリなスウェーデン娘エバ(スウェーデンの女優ファンニ・ケッテル 1996~)に起こされました。
ハロルドは、エバを仕方なく車に乗せa0212807_125254.jpg出発しますが、二人のコミカルなロード・ムービ―もなかなか笑えます。
ハロルドは、エバを家まで送り、雪道でエンストした車に出遭い困っている男を車に乗せると、何とこれが、自分でオンボロ車を運転しクリスマスイブに働く従業員を慰労しようとイケアの店に向う途a0212807_1332920.jpg中のイケア創業者のカンプラードその人でした。
カンプラードを誘拐したハロルドは、「お前のせいでウチの家具店が潰れた」と自分の人生が、上手くいかないのは、社会や他人のせいとばかり悪態を吐きました。
ホテルの一室にカンプラードを監禁してa0212807_1353717.jpgいるとき、エバが、突然現われました。
ここからさらに三人の奇妙な旅が、始まります。
映画の劇中、ハロルドが、「イケア」の製品をコケにするシーンやイケア創業者イングヴァル・カンプラード(1926~)の実名(下の写真はa0212807_1374580.jpgご本人)での登場、さらに映画の撮影(ロケーション)も実際にイケア店舗で行われイケアのロゴも堂々と登場します。
普通なら主人公ハロルドの敵役(ヒ-ル・イメージ)扱いを受ける「イケア」から抗議が、来そうなプロットなのに「イケアは、家具を売るのが仕事、あなたたちは、映画を撮るのが仕事」とクレームもなくa0212807_1412762.jpg撮影に協力してくれたとビケネ監督、イケア創業者カンプラードのしたたかな経営哲学(映画を媒体としてタダでイケアの宣伝をしてくれる)が、社内の隅々に行き亘っていることの証でしょう。

              (上写真 : 演技の打合をするハロルド役のビョルン・スンクェストとグンナル・ビケネ監督)
by blues_rock | 2016-12-30 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)