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心の時空

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教授のおかしな妄想殺人  シネマの世界<第658話>

御年81歳になっても毎年平均して1作ずつ新作を発表している名匠ウディ・アレン監督(1935~)の最新作「教授のおかしな妄想殺人」(監督・脚本)を紹介します。
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ウディ・アレン監督のもうひとつの才能(名ジャズクラリネット奏者)が、プロのジャズ・クラリネット奏者であること、その音楽センスは、「教授のおかしな妄想殺人」の劇中に流れる軽快なジャズで聴くことができます。
a0212807_1814167.jpgピアノ・ベース・ドラム編成トリオの軽快なジャズのリズムが、映画のシーンに実に効果的に配置され、未だ衰えを見せないアレン監督のブラックユーモア才気にあふれる演出と軽快なジャズは、ある大学教授の殺人に関わる奇妙かつ哲学的なダークなコメディ映画をテンポ良くし、見ている者を退屈させません。
a0212807_18145258.jpg原題「Irrational Man(非合理的な男)」が、日本公開では、「教授のおかしな妄想殺人」とタイトルを変えられ‘妄想’という文言が、映画を見る者に間違った先入観を与え、アレン監督の脚本(プロット)と決定的な相違を生んでいます。
私は、「教授のおかしな殺人計画」のほうが、この映画のプロットに適正と思います。
a0212807_18153342.jpg人生に絶望し世の中すべてに虚無的で悲観的、変人として評判の哲学教授エイブを演じるのが、名優ホアキン・フェニックス(1974~)です。
ホアキン・フェニックスは、サイコティックにもシリアスにも、ユーモラスにも役柄に成りきるのが、上手い俳優で、世の中のすべてを疎ましく感じる自己喪失した哲学教授エイブの演技も目のあたりに鬱々とした表情を漂わせ、ウィa0212807_18162586.jpgスキーのスキットルを肌身離さず持ち歩きキャンパスでもガブ飲みする変人教授を実に上手く演じています。
「人生に無意味はない」という言い切る虚無的な哲学教授エイブに恋をする女子学生ジルを若手女優エマ・ストーン(1981~ キュートな容姿に似合わない低い声が魅力的)、エイブを愛する同僚の化学教授リタにベテラン女優パーカー・ポージー(1968~)の三人が、a0212807_18171250.jpg繰り広げるダークかつユーモラスなコメディ映画です。
映画は、見てのお楽しみながら、教え子のキュートな女子大生ジルの熱烈な恋にも同僚の女性教授リタの体当たりの求愛にも無関心であった虚無的な哲学教授エイブが、ある日レストランで隣の席にいる他人の不幸話を耳にしたとたん、それに関わる悪徳判事の抹殺(殺人の完全犯罪)を思いつき人生に生きる喜びをa0212807_18285874.jpg見出しました。
その日からエイブは、頑なに拒否していたジルの恋も受け入れ、性的不能であったリタとのセックスも巧くいくようになりました。
エイブは、誰にも云わず一人で悪徳判事の身辺を詳細に調べ、判事の生活の行動パターンからの殺人計画を用意周到に準備しました。
a0212807_18293254.jpg殺人計画は、大成功で、「ジョギング中の判事、心臓発作で死亡」の新聞・TVニュースで一件落着かと思われましたが、エイブを殺人の実行犯と疑ったのは、ジルとリタの二人でした。
映画のエンディングは、呆気(あっけ)なくもおもしろく小道具の使い方もなるほど!とアレン監督の冴えた演出に感心しました。
a0212807_1830599.jpgアレン監督は、アカデミー賞ほか各地で開催される映画祭の賞にもまったく興味を示さず、アカデミー賞に史上最多の24回もノミネートされ、かつ何度か受賞していますが、授賞式には、一切出席しないことでも知られています。
授賞式当日、ニューヨークのライブハウスでクラリネットを吹いていたこともあるそうです。
a0212807_18333937.jpgウディ・アレン監督は、人間の本質(深淵)とそれを的確に演出するユーモアと同時にニヒルでブラックな笑いを哲学的に表現するセンスを併せ持った希代の万能映画人として天才チャーリー・チャプリンと並び称されることでしょう。
by blues_rock | 2016-12-14 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)