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心の時空

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預言者 ラース・フォン・トリアー  シネマの世界<第650話>

a0212807_17441285.jpgデンマークの映画監督ラース・フォン・トリアー(1956~)は、天才の資質の一つである奇人変人ぶりを遺憾なく発揮、次々に映画史に間違いなく残る傑作(または秀作)を発表しています。
私は、1996年作品「奇跡の海」(カンヌ国際映画祭グランプリ受賞)以来ほとんどのトリアー監督作品は、見ていますが、どの映画もグサリと胸に刺さる(心に残る)作品ばかりです。
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「奇跡の海」は、何と云っても主演女優エミリー・ワトソン(1967~)の憑かれたような演技が、じつに素晴らしく、2000年作品「ダンサー・イン・ザ・ダーク」(カンヌ国際映画祭パルムドール受賞)の主演女優ビョーク(1965~、アイルラa0212807_17463733.jpgンドのミュージシャン、カンヌ国際映画祭主演女優賞受賞)の怪演(傑出した演技)と併せ強く印象に残っています。
「映画は、靴の中の小石でなければならない」を信条とする預言者ラース・フォン・トリアー監督の哲学は、神経症(強迫観念症的な各種の恐怖症、重度の鬱病)や無宗教に由来する特異な精神を孕んでいますので、トリアー監督作品を見る者の立ち位置が、重要になります。
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そんなシンドイ思いまでしてトリアー監督の映画は、見なくていいと感じられるかもしれませんが、トリアー監督作品を見たくない方は、きっと人間の本性も分からないだろう(たぶん永遠に)と思います。
a0212807_1749384.jpg「ダンサー・イン・ザ・ダーク」の後に撮った2003年作品「ドッグヴィル」(‘犬の村’という15家族が住む村が舞台)でトリアー監督は、マグダナのマリア然とした不可解な謎の女グレース(慈悲・寛容・神の愛を意味する女性の名)をニコール・キッドマン(1967~ 1999年スタンリー・キューブリック監督の遺作「アイズ ワイド シャット」で偉大な女優ニコール・キッドマンになる)に演じさせ「非寛容(邪悪・偽善・強欲)」をプロットに ‘人間の醜さ’ をうんざりするくらい曝け出しています。
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何せニコール・キッドマン演じる謎の女にして聖女グレースは、村中の男たちからレイプされ村の女たちが、それを黙認しさらにグレースに鎖を着け奴隷女として扱い淫売女と蔑むさまは、胸くそ悪くなりますが、トリアー監
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督は、私に「お前もその一人だ、しっかり見ておけ」と云っているようでした。
ドッグヴィル(犬の村)で飼われている犬(声しか登場しない)の名前が、モーゼス(モーゼ)と云うのもブラック・a0212807_17581152.jpgジョークです。
トリアー監督の舞台劇のような演出も斬新で、大きな建物の床(平面)に白い線と文字でドッグヴィル村の構図を示し俳優たちは、ドアの開閉をする仕草をパントマイムで行ないドアの軋む音などは、効果音を挿入し撮影しています。
a0212807_17585338.jpg映画の構成もプロローグ(誰かに追われた不可解な謎の女グレースの登場)に始まり第1章から9章と本のページをめくるように エピローグ(ハルマゲドンのような終章)へと展開していきます。
第5章までは、ドッグヴィル村の弱く貧しい人びとが、必死で努力しながら助け合いながら暮らしている光景を描いています。
a0212807_17592029.jpg第6章から村住民たちの本性(身勝手なエゴ)が、露わになり、村から逃げようとするグレースは、首輪を付けられ鎖に繋がれて虐待されるようになりエピローグに至ります。
トリアー監督は、「ドッグヴィル」の続編として2005年に「マンダレイ」を撮り、ドッグヴィルを出た後のグレース(ブライス・ダラス・ハワード 1981~ ロナルド・ハワード監督の長女、ブライス・ダラス・ハワード演じるグレースも秀逸)と彼女が辿り着いた奴隷農園マンダレイでのグレースの様子を描いていますが、これa0212807_180068.jpgもまた強烈かつ辛辣なストーリーです。
トリアー監督は、「マンダレイ」も「ドッグヴィル」と同じ舞台劇のような演出により映画に登場する人びとの傲慢・偽善・無知・無責任を痛烈なブラック・ユーモアとアイロニーで批判、2016年の今年、図らずもアメリカの次期大統領選挙であぶり出されたアメリカ社会に潜在していた現況(傲慢・偽善・妄想・偏見・差別・非寛容など)を11年前にトリアー監督が、すでに予見し「マンダレイ」でアメリカの混乱(カオス)を
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シニカル(冷笑的)に描いた作品としてもう一度見たら大変おもしろい映画と思います。
‘人間の本性’を無視した観念的な道徳の無力や無意味さを描かせたら天下一品の、この意地の悪こそさが、a0212807_1842261.jpg天才トリアー監督最大の魅力です
アメリカ三部作としてトリアー監督は、「ドッグヴィル」、「マンダレイ」を撮り三部作完結編の「ワシントン」を現在企画(無期延期ながら)しているそうです。
さて、どんな預言者 ラース・フォン・トリアー監督の文明批判になるのかと今からワクワクしながら、その公開を待っています。
by blues_rock | 2016-11-19 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)