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心の時空

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テレーズの罪  シネマの世界<第635話>

日本では、2013年のフランス映画祭で上映されただけで一般公開されていませんが、上質な佳作映画です。
原作は、フランスのノーベル文学賞作家 フランソワ・モーリアックが、1927年に発表した小説「テレーズ・デスケルウ」、監督は、この映画が、遺作となったフランスの名匠クロード・ミレール監督(1942~2012、2007年作品
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ある秘密」)です。
映画の見どころは、何といっても主人公の女性テレーズ・デスケルウを演じるオドレイ・トトゥ(1976~、2001年妊娠したエミリー・ワトソンの代役として主演した「アメリ」が空前の大ヒット)の精神を病んでいくテレーズその人に
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成りきった存在感(すばらしい演技)にあります。
そして、テレーズ(オドレイ・トトゥ)の夫ベルナールを演じるジル・ルルーシュ(1972~ 2010年映画「この愛のために撃て」主演)が、旧態依然の価値観に縛られたデスケルウ家一族を象徴していて、一見仲睦ましい夫婦のa0212807_11184210.jpg蝕まれていく心理劇を名優二人は、見事に演じています。
1920年代南西フランスのランド県、大地主の娘テレーズは、親同士が、決めた結婚に何の疑いもなく同意し同じ県の大地主デスケルウ家に嫁ぎました。
テレーズは、体面上敬虔なカトリック信者を装い既成秩序への服従と家名第一のデスケルウ家当主である夫ベルナールとの暮らしで不和はないものの、ランドの森の偽善に満ちた退屈な日常に次第に何も感じなくなっていきました。
a0212807_11213790.jpgオドレイ・トトゥは、精神を蝕んでいくテレーズの心理変化、憂鬱な表情、生気のない虚脱感、妄想による衝動行為などテレーズの悲劇(罪)を抜群の表現力で演じています。
テレーズの心理変化を表わす小道具としてタバコを使ったミレール監督の演出は、秀逸でテレーズが、頻繁にタバコを吸うシーンは、その表情と併せて見ていただくとオドレイ・トトゥの抜群の演技力が、お分かりいただけます。
若いテレーズは、両家の親同士が、決めた自分の結婚に当初、何の不満も疑問もなく、結婚相手に愛はなくとa0212807_11262435.jpgも両家の膨大な山林資産を守るためと考えていました。
テレーズは、親友であり義妹になるアンヌ(アナイス・ドゥムースティエ1987~)が、身分の違う相手との激しい恋を諌めますが、その生き生きとしたアンヌの表情(感情の奔流)に羨望や嫉妬を覚えるようになりました。
やがて、テレーズは、妊娠、女の子を出産しましたが、そのころからテレーズの妄想もまた次第に悪化していきa0212807_11272434.jpgました。
夫ベルナールが、ある日軽い心臓発作を起こし処方薬のヒ素を少量飲んでいたことからテレーズは、自分の鬱積した閉塞感を取り除くため処方箋を偽造し、夫の毒殺を密かに謀りました。
夫ベルナールは、次第に衰弱していきますが、緊急入院した病院でヒ素の過剰投与によるものとテレーズの処方箋偽造は、発覚し処方箋偽造による殺人未遂の罪で告訴されました。
キリスト教(カトリック)の罪である離婚を認めない夫ベルナールは、家名を汚すスキャンダルをもみ消すためにa0212807_11283371.jpg一緒に外出するなどして円満な夫婦関係に見せかけますが、テレーズは、幼い娘との面会を禁じられ、屋敷片隅の粗末な部屋に監禁されました。
次第に生気を失いやつれて廃人のようになったテレーズの無惨な姿を見て、ベルナールは、妹アンヌの結婚式が、終わったら(離婚はしないが)テレーズを自由にすると約束、家名と名誉を重んじるデスケルウ家とテレーズの実家によって告訴は、取り下げられました。
a0212807_1129292.jpg夫ベルナールは、別居する妻テレーズの希望を聞き入れパリで暮らせるようにしました。
赦しを請うテレーズにベルナールは、彼女を赦し娘に会いに来ることも認め、テレーズになぜ自分に毒(ヒ素)を盛ったのかと尋ねますが、テレーズは、どんな言葉で説明しても本当のこと(心の深層=真相)は、伝わらず、必ず嘘が、交じるからと説明しませんでした。
エンディングでテレーズの見せる笑顔が、印象に残る映画です。
「テレーズの罪」は、クロード・ミレール監督の演出と併せフランスの豊かな自然と旧き好き時代(ベルエポック)
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の風俗を美しい映像で撮った撮影監督ジェラール・ド・バティスタ(1946~ 「ある秘密」撮影監督)のカメラワークが、すばらしく、フランス映画ならではの人間の深層心理をミステリアスに描いた上質な映画でした。
by blues_rock | 2016-09-23 00:23 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)