アリスの恋 シネマの世界<第652話>
さて、今夜ご紹介する「アリスの恋」(Alice Doesn't Live Here Anymore)は、スコセッシ監督を一躍有名にした1976年作品「タクシー・ドライバー」の前に撮った1974年の作品です。
42年前の作品なので風景や風俗、車、ファッションに70年代当時の雰囲気(旧き良き時代の名残り)を大いに楽しめますが、今見ても映画に旧さは、まったくなくアメリカン・ニューシネマを背負う新進気鋭当時32歳のマーティン・スコセッシ監督が、見せる秀逸な演出とカメラワークは、出演者の若い頃と併せ必見です。
主人公アリスを演じるのが、名女優エレン・バースティン(1932~、出演当時42歳)で美人女優では、ありませんが、魅力的なオーラをもつ演技の上手い女優です。
アリスと息子トム(アルフレッド・ルッター 1962~、当時12歳)との会話が、生き生きとしておもしろく、この母子に絡むデイビット役のカントリー&ロック歌手クリス・クリストファーソン(1936~、当時38歳)、名優ハーヴェイ・カイテル(1939~、当時35歳)、名脇役女優ダイアン・ラッド(1935~、当時39歳)、何といっても極めつけは、当時12歳の初々しくチャーミングなジョディ・フォスター(1962~)です。
ジョディ・フォスターは、この映画に出演した後14歳のとき、スコセッシ監督から「タクシー・ドライバー」の準主演である少女売春婦役を名演、若くして名女優となり現在監督となり自分の作品を撮っています。
映画は、少女のころ歌手を夢見ていたアリスですが、平凡な結婚をしてトラック運転手の夫のご機嫌をとり、生意気盛りの息子に手を焼きながら平穏に暮らしていました。
ある日突然、トラック事故で夫を亡くしたアリスは、それまで夫に依存した専業主婦であったため子供と二人の生活に困り、息子トムの新学期までに故郷のカリフォルニア、モントレーへ帰ることにしました。
家財を売払い生意気盛りの息子トムとの長旅(ロングドライブ)が始まりました。
途中、場末のバーで憧れの歌手の仕事を見つけますが、店の客(ハーヴェイ・カイテル)に口説かれ情にほだされるも一皮むけば、サディスティックな妻帯者のDV男でした。
急いで逃げ出したアリスは、次の町で生活費を稼ぐためにウエイトレスになり店の常連客デイビット(クリス・クリストファーソン)と知り合いお互い惹かれますが、生意気な態度の息子トムに厳しく接するため別れて故郷モントレーへ向かうことにしました。
円熟した名女優エレン・バースティンのチャーミングな演技とキュートなジョディ・フォスターを見ているだけでも楽しめる映画です。