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心の時空

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a day in my life

安藤緑山 ‥ ハイパーリアリズム 超絶技巧の牙彫美

私は、二十代半ばヨーロッパの美術館でルネッサンス(イタリア・ドイツ・フランドル)絵画を見て脳天を割られ、三十代になると日本の伝統工藝(琳派絵画・漆芸蒔絵・古伊万里や古鍋島の色絵磁器など)に心を奪われ、この世のものと思えない天才たちの作品に感動してきました。
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しかし、不覚にも私の中で‘すっぽり抜けている’のが、書画骨董の類いとして若いころにあまり関心のなかった巻物・硯箱・料紙箱・文台・香炉・香箱・小箱・花瓶・印籠・根付・煙草入・煙管・煙管筒・矢立・刀装金具・帯留・櫛・かんざしなど日本伝統工藝品の数々でした。
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漆芸のひとつ「金継ぎ」をするようになってから漆蒔絵の道具や印籠などを間近で見る機会が、多くなり、私の中で‘すっぽり抜けている’伝統工藝品の逸品を見て私は、「目からウロコ」が、落ちました。
明治・大正・昭和期の天才牙彫家 安藤緑山(萬蔵、1885~1955)の象牙彫刻作品のハイパーリアリズム(超絶
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技巧の職人技)にもダ・ヴィンチやフェルメールの絵を見たときと同じ感動を覚えます。
安藤緑山は、昭和30年まで台東区に住んでいた象牙彫刻家(牙彫職人)くらいの情報しかなく人物像も含め謎に包まれていて、超絶技巧のノウハウ(技術)を伝承する気が、まったくなく弟子もとらず下絵や制作記録などの
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資料・メモ類も一切残していません。
安藤緑山の作品は、国内の皇室を含むごく限られた富裕層に愛好され、海外にも熱烈な愛好家(コレクター)が、いて「緑山乍」の銘で牙彫商の金田兼次郎名義で納品していました。
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安藤緑山の牙彫は、野菜や果物などをモチーフに50数点の作品があるのみで、素材の象牙に鉱石・鉱物の無機系顔料で着色しているのが、最大の特長(個性)です。
牙彫家 安藤緑山の作品を今風に言うなら‘ハイパーリアリズム’、超絶技巧の天才職人技です。
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清水三年坂美術館館長の村田理如氏(村田製作所創業者次男、元専務、47歳のとき退社し江戸・明治・大正期の日本伝統工藝品の収集に専念、清水三年坂美術館を創設)は、「 明治以降、日本は、急速に欧米の文化を取り入れ、生活スタイルも欧米化しました。 学校教育も美術や音楽は欧米のものが、中心でした。 日本人の
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美術に対する関心も、日本の伝統的なものより印象派の絵画や西洋骨董などに集まり、幕末・明治の美術品に関心を持つ人が、ほとんどいなくなってしまったのです。 また、たとえ関心があっても欧米人ほど高く評価しない為、高額な名品は、海外に流出していくのです。 その結果、日本にはガラクタばかり残り、ますます明治の美術
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館に対する評価も下がってしまったのです。」(明治の美術に魅せられて、より抜粋)と日本伝統工藝品の収集にかける情熱を述べておられます。
村田清水三年坂美術館長の言葉は、1868年の明治維新以来の文明開化と和魂洋才により今日までの150年間に喪失した日本伝統文化の総括として蓋(けだ)し名言(箴言)です。
by blues_rock | 2016-09-07 00:07 | 金継ぎ/古美術/漆芸 | Comments(0)