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心の時空

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名女優 京マチ子の懐かしい三作品(前編)  シネマの世界<第623話>

a0212807_1841332.jpgつまらない日本映画ばかりが、氾濫する昨今に、私は、わが永遠のスター 名女優 京マチ子主演の傑作映画を今まで紹介してきましたが、二夜連続でご紹介する三作品「浮草」、「穴」、「鍵」は、いま見ても優れた映画です。
主演女優 京マチ子の艶やかさは、60年近くたった現在(いま)も色あせることがありません。
若いころから京マチ子が、出演した映画は、いろいろな国際映画祭で最高賞を受賞していたことから‘グランプリ女優’と称され高く評価されて来ました。
名匠小津安二郎監督、晩年の1959年作品「浮草」は、京マチ子35歳のときに主演した映画で、彼女の色っぽく気風(きっぷ)の好い演技は、見ていて惚れ惚れします。 
この映画「浮草」で名撮影監督の宮川一夫(1908~1999、溝口監督や黒澤監督作品の数々を撮影した名カメラマン)は、ドイツのアグファカラー(Agfa color)技術を採り入れ‘赤(朱色)’を強調、その斬新なテクニカラー映像は、日本映画史の一つのモニュメントです。
「浮草」は、小津監督が、1934年に撮影した映画「若草物語」(モノクロ、サイレント版現存)のリメイク版で旅芸人‘駒十郎一座’を描いた群像人情劇です。
座長の駒十郎を二代目中村鴈治郎(1902~1983)、その女房に京マチ子、一座の若手女役者を若尾文子(1933~、当時26歳)、駒十郎の元馴染みの女(元愛人)に杉村春子(1906~1997、この映画劇中のセリフ「あゝそう」に小津監督は70回のNGを出したと述懐)、一座のひいき筋の旦那に笠智衆(1904~1993)など小津監督の厳しい演出a0212807_18132742.jpgに応える芸達者たちの演技は、脇の出演者も含めて‘役者だなあ’と(今の日本に‘役者’が少ないので特に)感動いたします。
   * * *
京マチ子は、市川崑監督(1915~2008 1956年作品「ビルマの竪琴」、1958年作品「炎上」)の映画に(確か)4作出演しています。
a0212807_18163614.jpgそのうちの一つが、1957年の作品「穴」です。
京マチ子は、ブラックなコメディ映画の主人公が、変装しながら逃亡するという役どころで、その役柄を軽妙かつコミカルに演じ ‘コメディエンヌ(喜劇女優)’ としての才能も発揮しています。
京マチ子が、演じる出版社の記者 北長子は、根拠のない警察の汚職告発ルポルタージュ記事を書き、クビになりました。
a0212807_1826387.png途方に暮れていると北林谷榮(1911~2010)演じる調子のいい旧友赤羽スガに「新しいルポ企画がある」と声かけられホイホイと乗ってしまいました。
弱小出版社にスガが、売り込んだ「人は完璧に‘蒸発できるか?’ 30日間逃亡できたら賞金50万円」といういい加減なルポ企画でした。
出版社をクビになった長子には、「30日間の逃亡資金」がなく、スガは、彼女に銀行の支店長に知り合いがいるから借金できるよう斡旋するので至急会うように指示されました。
指定された銀行に行くと支店長と副支店長の長子に応対する態度が、どこかa0212807_1827943.jpg変でした。
支店長と副支店長は、表面上お堅い銀行マンのふりをしながら裏で気の弱い出納係を使い多額の預金を横領していました。
ルポ企画実行の逃亡資金が、どうしても欲しく、銀行から借金したい長子は、ここでも二人の良からぬ提案にホイホイ乗り出納係殺人事件の逃亡犯にされてしまいました。
京マチ子演じる長子の感情のこもらない早口のセリフが、相手かまわずポンポン飛び出し、映画を見る者は、一見ドタバタした不条理劇のように感じるものの、このアップテンポな展開が、妙に垢ぬけてシャレて見えるのは、久里子亭(市川監督と夫人の和田夏十 1920~1983 との共同ペンネーム)脚本の秀逸さでしょう。(後編に続く)
by blues_rock | 2016-08-22 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)