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心の時空

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神さまなんかくそくらえ  シネマの世界<第613話>

新進気鋭して俊英の映画監督ジョシュア(兄 1984~、脚本)&ベニー(弟 1986~、編集)・サフディー兄弟監督は、実話をもとにニューヨークのマンハッタンで路上生活するヘロイン中毒者の少女が、たどる破滅的な‘ローレンツの刷り込み’のような恋(生まれて初めてやさしく接してくれたヘロイン売人の少年への一途な恋)を斬新な
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映像(トラッキングとフォロー、シーンによってはズームアウトのカメラワークが抜群)で描いています。
「神さまなんかくそくらえ」の原題は、「Heaven Knows What(神は何も知らない)」で、主人公であるジャンキーでホームレスの少女ハーリー(アリエル・ホームズ 1993~)が、「あなた以外は、全部ゴミ!」と言う恋人への想いa0212807_1942059.jpgもヘロインとアルコールでいつもラリっている恋人イリヤ(ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ 1989~)は、冷淡で薄情そのもの、いつも自分の都合で彼女を利用するだけでハーリーに暴言を吐き思いやりのカケラもありません。
この映画の原作者は、ハーリーを演じたアリエル・ホームズ自身で演技経験ゼロ、映画初出演ながらすばらしく、サフディー兄弟監督の演出による演技なのか自然な演技しているのか‘ジャンキーでホームレス’のリアリa0212807_1945067.jpgティ(現実感)は、ドキュメンタリーのようでした。
原作・主演のアリエル・ホームズの半生は、12歳のときジャンキーの母親の影響でコカイン中毒になり、さらに祖母や親戚からネグレクト(児童虐待)を受け家出、ニューヨークでストレート・チルドレン(路上生活者)になりました。
そのころ知り合ったストレート・チルドレン仲間の少年イリヤ(実在するもヘロイン摂取過多で死亡)からハーリーa0212807_1962542.jpgは、生まれて初めて人として‘やさしく’してもらいました。
それ以来ハーリーは、「あなた以外は全部ゴミ」とイリヤに付きまとい、彼をただ愛することだけが、彼女の生きる理由でした。
イリヤは、「あなたのためなら死ねる」と言うハーリーを疎ましく思い邪険に扱い、自分の前で「死んでみろ、いま死ね」と言い捨てました。
イリヤの愛が欲しいハーリーは、カミソリで手首を切りました。
a0212807_1994168.jpg映画は、このシークエンスから始まり登場する人物たちが、皆ジャンキーでアルコール中毒のホームレスばかりなので気持ちを暗くさせますが、絶望とどん底の暮らしをした実体験からハーリーを演じるアリエル・ホームズの実在感とイリヤを演じる若手俳優のケイレブ・ランドリー・ジョーンズ(演技経験がある俳優は彼だけ)の虚無と孤独感は、すばらしく特筆すべき表現力(演技力)です。
a0212807_19104368.jpg撮影監督ショーン・プライス・ウィリアムズ(1977~)のカメラワークも必見、カメラは、遠景でホームレスたちの生態をズームアウト(どん引き)撮影する一方でハーリーやイリヤたちジャンキー・ホームレスをトラッキングさらにロングショット、ミディアム・ロングショット、ミデイアムショット、クローズアップ、ビッグ・クローズアップなど、ドキュメンタリー映像で撮影技術のキャリアを積んだウィリアムズ監督ならではのカメラショットが、いまを刹那に生きる少女a0212807_19134542.jpgの瞬間を鮮明に捉えています。
サウンドトラックにシンセサイザー音楽の祖にして作曲家富田勲の1974年デビューアルバム「月の光」が、使われています。
「神さまなんかくそくらえ」は、東京国際映画祭で最高賞(東京グランプリ)を受賞、同時にサフディー兄弟監督が、最優秀監督賞を受賞しました。
by blues_rock | 2016-07-25 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)