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心の時空

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カチンの森  シネマの世界<第611話>

ポーランド映画を代表する名匠アンジェイ・ワイダ監督( 1926~)の2007年作品「カチンの森」(原題 Katyń )は、第2次世界大戦中の1939年、ポーランドで実際に起きた独裁者スターリン率いるソ連軍の卑劣極まりない虐殺
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事件(歴史的に実証された事実)を描いた秀作映画です。
ワイダ監督の父親も「カチンの森虐殺事件」の犠牲者の一人であるだけに2時間余の全編をとおしてワイダ監督
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演出の気迫が、緩むことはなく、当時の実写フィルム映像も挿入しながら、目を背けたくなるような虐殺シーンも冷徹な視線でリアルに撮影しています。
a0212807_12365279.jpg撮影監督パヴェル・エデルマン(1958~ 2002年「戦場のピアニスト」カンヌ国際映画祭パルムドール受賞の撮影監督)は、ワイダ監督の鎮魂を静謐なトーンのヒンヤリした映像でワンカット・ワンシーン丁寧に撮っています。
その不条理にして理不尽な虐殺シーンをドキュメンタリーの実写した映像のように次から次へ見せられると見る者の心は、悲痛と激怒で凹み、暗澹a0212807_12465491.jpgたる気持ちになっていきます。
1939年ポーランドは、西から冷血な独裁者ヒトラー率いるナチスドイツ軍、東からこれまた血も涙もない鬼のようなスターリン率いるソ連共産党軍に侵略されました。
その国家存亡の危機に召集されたポーランド軍の予備将校たち(軍属以外の知識人予備兵たち)は、兵役に付きますが、ポーランドを分割支配するナチスドイツ軍とa0212807_12475984.jpgソ連軍に彼らは、邪魔な存在でした。
1939年9月、ポーランド亡命政府は、武装解除された予備将校1万人を含む総勢25万の軍人と民間人が、消息不明であると発表、世界を震撼させました。
1943年、ポーランドを占領していたナチストイツは、ソ連との相互不可侵条約を破棄しソ連に侵攻、ポーランド国境近くソ連領内の‘カチンの森’に22,000のポーランド人将校の死体が、埋めa0212807_1251211.jpgられているのを発見したとポーランド赤十字社を通じて公表しました。
ヒトラーの忠臣であった宣伝相ゲッペルスは、これをナチスドイツの反ソ連のプロバガンダ(政治宣伝)に利用すべく大々的な調査(その時の記録映像が多く現存するのはそのためでこの映画にも挿入されている)を命じました。
a0212807_12521539.jpg映画は、1939年ソ連軍に侵攻されたポーランドでソ連の捕虜となったアンジェイ大尉(アルトゥール・ジミエウスキー)とその家族を通して不条理な戦争に蹂躙され理不尽な非業に呑みこまれた人間の不幸を描いています。
夫アンジェイの行方を必死で探しやっと見つけた妻アンナ(マヤ・オスタシャースカ)でしたが、それもつかの間、自分と幼い娘の目の前でソ連軍に連行されて行きました。
a0212807_12534138.jpgアンナは、娘と夫の両親のもとに行きますが、夫の父は、すでにナチスに逮捕され強制収容所で病死していました。
アンジェイ大尉の残された家族は、彼の帰還をじっと待ち続けました。
カチンの森に大きな穴を掘り、その前にポーランド人将校を並べ一人ひとり彼らの後頭部を撃ち処刑し無表情で穴の中に落として行いくソ連兵たちに戦慄が、走りぞっとします。
a0212807_12543088.jpgワイダ監督入魂の演出は、常に大国に蹂躙され続けてきた祖国ポーランドの不条理な受難および苦悩(抑圧と虐殺)を世界史に残さなければならないという義憤にあふれています。
2010年、ロシアのプーチン大統領(当時首相)は、旧ソ連軍によるカチンの森虐殺事件を「これは、スターリン全体主義の残虐行為で正当化できない犯罪であるが、ロシア国民の罪にするa0212807_125623.jpgのは、間違ってい
る。」と主張し犠牲になったポーランド人将校22,000人とその遺族へ謝罪しませんでした。
戦争を知らない世代が、お互い口角泡を飛ばして罵り合い「謝罪しろ」と喚いても未来への貢献はありません。
悲惨な戦争を引き起こした愚かな過去から人間の究極の不幸を学び、決して同じ愚劣な過ちを繰り返さないように‘粉骨砕身、努力する’ことこそ私たちにできる最良の謝罪であると私は、確信しています。
by blues_rock | 2016-07-19 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)