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心の時空

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a day in my life

待つ女  シネマの世界<第610話>

‘女と男’を描かせたらフランス映画に敵う恋愛(ロマンス)映画は、ありません。
ロマンス映画のプロットは、‘女と男’、 ‘女性’ が、主役でなければ、‘恋愛(ロマンス)映画’になりません。
この2007年のフランス映画「待つ女」は、夫ヴァンサンが、服役している刑務所に週2回、洗濯物や差し入れをもって面会に行く貞淑な妻メイテを主人公にしています。
a0212807_111793.jpgメイテは、ヴァンサンの服役から1年あまり過ぎたころ女性の心理として一人暮らしの寂しさと夫不在の精神的な不安感に苛まれ性的欲求不満と孤独感で空虚な日々を送っていました。
ある日メイテは、兄が服役していると云う青年ジャン(実は看守)から声をかけられ「心の均衡を保つためにも愛人を作ることだ」と求愛されました。
監督(脚本)のジャン=パスカル・アトゥ(1962~)は、夫のヴァンサンが、なぜ服役しているのか、どんな罪を犯したのか、妻メイテの暮らしは、何で成り立っているのか、何も説明しないまま登場人物たちの状況をどんどん切り替え、そのうえ各シーンのセリフが、極端に少なく映画を見る者は、妻のメイテ、夫のヴァンサン、看守のジャン、彼らの表情からそれぞれの心理状態や感情をくみ取り想像しなければなりません。
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原題が「7 ANS(7年間)」なのでメイテは、7年間、夫ヴァンサンの出所を「待つ女」というわけです。
メイテの暮らしは、愛するヴァンサンと面会するために週2回刑務所に行き面会室で短い時間に愛を語り、ヴァンサンから汚れた衣服類を受け取り、持ち帰り洗濯し次の面会のとき届けると云うその繰り返しでした
それ以外メイテは、愛する者(男)のいない孤独な時間を虚しく過ごすのが、彼女の日常でした。
a0212807_1118434.jpg映画は、冒頭メイテが、ヴァンサンの汚れた衣服を洗濯機に入れる時、彼の体臭を嗅ぎ、洗った衣服にアイロンを丁寧にかけゲランの香水をスプレーするシーンから早くもエロティシズムの香り漂う雰囲気です。
劇中メイテが、性的欲望を満たすために自室のベッドで自慰するシーン、メイテとジャンの車の中でのセックスシーン(広い野原に停めた2人のいる車を遠景ショットで撮影)、ヴァンサンとジャンとの性愛シーンなどエロティシズムにあふれています。
ほかにも夫のヴァンサンが、妻メイテへの愛と性欲、捨てられるのではないかという精神的な不安感からメイテa0212807_11204652.jpgに一種のサディズム的愛情表現したり、メイテとジャンの情事を知ったヴァンサンは、ジャンにセックス中に発するメイテの声の録音テープを届けるよう強制したりメイテとの性行為の方法まで指示するというヴァンサンの性的倒錯シーンもありますが、どのシーンにも嫌らしさは、ありません。
アトゥ監督の演出の良さもありますが、主演した妻メイテ役ヴァレリー・ドンゼッリ(1973~、女優、映画監督、脚本家)は、セリフも少なく表情や所作で不安定な心理を表現する上手さ、夫ヴァンサン役ブリュノ・トデスキーニ(1962~)の不器用で無頼な男っぽさ、看守ジャン役シリル・トロレイの神経質症のような繊細さと精神不安をもa0212807_11223320.jpgつ青年(彼はメイテを心から愛していた)らしさなど三者三様の演技が、光った映画でした。
愛するメイテと別れ列車で新しい赴任地に向かうジャンが、車窓からただ外の景色を見続ける物憂げな表情は、哀切です。
ジャンと別れたメイテは、夫との面会に行き受付を待つ間、刑務所入口から右の列に並ぶそれまでの習慣を止めラストシーンでは、入口左側でひとり受付を待ち、彼女の服装や髪型もそれまでのくたびれた様子と変わり表情から不安が、消えていました。
フランスの恋愛映画は、10代のころから現在までたくさん見ましたが、この「待つ女」も何ということもない平凡な
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女と男のメロウなドラマながらフランス映画は、‘女と男’の恋愛(ロマンス)を描くのが、本当に上手いなぁと感心いたします。
フランスでは、日本人特有の下世話な(やっかみ)下ネタ感覚で‘不倫’と呼ぶ男女関係こそ本当の恋愛(ピュアなロマンス)であり、映画、小説、詩、シャンソンのモチーフとして‘女と男の愛(L’amour)’を人間普遍のテーマ(芸術)とするところが、大人として成熟の証しと云えるでしょう。
by blues_rock | 2016-07-13 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)