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心の時空

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悪党に粛清を  シネマの世界<第602話>

a0212807_13263689.jpgデンマークは、なかなか個性ある優秀な映画監督や名優を輩出する国だと感心します。
このデンマーク製西部劇(正確にはデンマークを中心にイギリス・南アフリカとの合作ウェスタン)のひと味違う’ところは、イタリア版西部劇(俗に言うマカロニ・ウェスタン)の徹底したエンタメ西部劇と違い、脚本・演出ならびに映像にデンマーク映画らしい美学を取り入れていることです。
監督と脚本(アナス・トーマス・イェンセンと共同脚本)は、デンマークのベテラン映画監督クリスチャン・レヴリング(1957~)でデンマークのヌーベルヴァーグ‘ドグマ95’(こちら参照)のメンバーでした。
レヴリング監督と撮影スタッフは、映画の撮影地を南アフリカにロケハンし、アフリカの荒涼とした大地をアメリカa0212807_17544497.jpgの西部に見立て砂塵の舞う伝統的な西部劇にしました。
レヴリング監督は、脚本執筆のときから主人公の元デンマーク軍兵士をマッツ・ミケルセン(1965~)に決めており、敗軍の元兵士のジョンが、アメリカに新天地を求めた移民のイメージ作りをしています。
西部劇に付きもののガンファィトもガンマンの拳銃早撃ちではなく、19世紀のヨーロッパ戦線の戦争で銃撃戦をa0212807_1283198.jpgしたらこのように戦うだろうなと想像できるリアリティのあるガンファィトでした。
レヴリング監督は、古典的なアメリカ映画の西部劇ならびにセルジオ・レオーネ監督とクリント・イーストウッド主演によるイタリア版ウェスタン映画へのオマージュ(名シーンをアレンジし挿入)と黒澤明監督作品からのインスパイアと想われる月光(つきあかり)による陰影のショットなど羅生門の木洩れ陽a0212807_1292829.jpgのシーンをふと憶い出しました。
日本公開タイトルの「悪党に粛清を」(原題「The Salvation 救済」)は、映画を見る者に残忍な殺戮シーンの多い映画を創造させますが、レヴリング監督は、これ見よがしの過剰な暴力シーンを多用しないシンプルなカットの連続で、デンマークからやっと呼び寄せた家族(7年ぶりに会う妻と10歳の息子)を虐殺され、さらにアメリカ西部a0212807_1361067.jpgに入植し苦労を共にした兄までも惨殺した悪党(ならず者)たちに復讐していく主人公ジョンの怒りをストレートに表現しています。
主人公ジョンを演じるマッツ・ミケルセンと共演するキャストが、また適任で個性派ぞろいです。
ジョンの兄ピーターをスウェーデンの名優ミカエル・パーシュブラント(1963~ 「未来を生きる君たちへ」、「エーa0212807_137245.jpgジェント・ハミルトン 祖国を愛した男」)、残忍非道の悪党のボス、デラルー大佐をアメリカの俳優ジェフリー・ディーン・モーガン(1966~ 「クーリエ 過去を運ぶ男」、「キリング・フィールズ 失踪地帯」)、デラルー大佐が、姫(プリンセス)と呼ぶ舌のない弟の情婦マデリンをフランスの美人女優エバ・グリーン(1980~)、他にもデラルー大佐の手下で悪徳町長にイギリスの名優ジョナサン・プライス(1947~ 「未来世紀ブラジル」)、ジョンの妻にデンマークの女優ナナ・オーa0212807_1375039.jpgランド・ファブリシャス(1985~)と名優・名女優ぞろいです。
原野の月明かり、疾走する馬車の砂ぼこり、吹きわたる風、闇夜の雷鳴などアメリカ西部の自然を丁寧に撮り、巨悪に支配され寂れていく町の雰囲気を醸し出すプロダクションデザイン(美術)のリアル、ずしりとした重みとざらついた質感をもつ衣装類や小道具のディテールのリアリティ
a0212807_139746.jpg
などなかなか見応えのあるニュータイプのデンマーク製西部劇でした。
by blues_rock | 2016-06-22 00:22 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)