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心の時空

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傑作 草原の実験(後編)  シネマの世界<第600話>

コット監督の静謐な演出を自家薬籠中の物とした撮影監督レバン・カパナーゼ(プロファィル不詳)の計算し尽くされた映像は、清冽でときにアンドリュー・ワイエスの絵を想わせ構図と色彩(とくに赤の配色がすばらしい)の美しさa0212807_14133341.jpgが、目を惹きます。
音楽を担当した作曲家アレクセイ・アイギ(1971~ ロシア映画祭で「最優秀音楽賞」を受賞)が、現代音楽と民族音楽(モンゴル声楽)をコラボレーションさせたサウンドトラックもまた心地よく、コット監督の静謐な演出とカパナーゼ撮影監督の清冽な映像を融合する役目を大いに果たしています。
a0212807_1416933.jpg1949年にカザフスタンの草原で実際にあった核実験をモチーフに製作された映画「草原の実験」は、核戦争の危機(リスク)を未だ回避できない人類に向けた鋭い(シリアスな)問題提起です。
映画の前半は、牧歌的なストーリーながら途中から突如生の営みから死の恐怖へ暗転、人類の消滅に向かうヨハネの黙示録(最終決戦地メギドの丘=ハルマゲドン=カザフスタンの草
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原)の暗喩(メタファ)が、不気味なリアリティをもってきます。
ヨハネの黙示録を想起させるメタファは、他にもありますが、省略します。
a0212807_14192971.jpg少女のベッドの上に貼られた古い世界地図、少女の大切にしているスケッチブック、草原を走る翼のないプロペラ機、少女が、三編みを解いて長い髪を切った翌朝、コーカサス少年の洗濯したシャツの腕が、風に吹かれ並んで干された少女の白いワンピースを抱くシーンなどメタファa0212807_1420980.jpgのメリハリも利いています。
映画は、最後の10分、1時間24分あたりから一転して地獄絵図に変わります。
遠くで鳴る地響きと閃光、一瞬にして青空の太陽が、消え水爆のキノコ雲と暗雲の出現、綾とりをしていた少女と少年、有刺鉄線の向こうの実験場で放射能を浴び亡くa0212807_14205568.jpgなった父親と少女の家は、瞬時に消滅しました。
天地鳴動したあと草原に埋葬されていた父親の遺体が、キリスト再臨のように出現しました。
世界の終わりの日の朝、昇りかけていた太陽は、昇るのを止めまたゆっくり沈み始めました。
a0212807_14212133.jpgこの核爆発10分のシークエンスは、アレクサンドル・コット監督が、広島と長崎への追記憶(メモリアル)として再現したものと推察、日本映画の名作「父と暮らせば」で8月6日の朝、主人公(宮沢りえ)は、父と暮らす広島の空を見上げたとたん頭上で原爆の閃光が、広がり広島を消滅させるシーンと私の中で重なりました
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「シネマの世界」は、今回で六百夜となりましたが、千一夜を自分の目標にもう少し続けたいと思います。
by blues_rock | 2016-06-17 00:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)