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心の時空

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サイの季節  シネマの世界<第596話>

イラクとトルコ合作の2015年映画「サイの季節」は、イランから亡命したバフマン・ゴバディ監督(1969~)が、イランのクルド人詩人サデク・カマンガルをモデルに描いたイスラム国家(中東アラブ世界)の宗教独裁と強権政治
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の欺瞞ならびに有無を言わせぬ圧政を告発する社会的意味合いの強い作品です。
ゴバディ監督は、捏造された反イスラム革命詩人として30年間獄中で生きた主人公の現実と瞑想(イメージ)のa0212807_2014245.jpg心象風景をシックな幻想的な映像で描いています。
とくに、ゴバディ監督の演出(詩的イメージ)を見事に具現したイランの撮影監督トゥラジ・アスラニが、撮った現実(リアル)と心象風景(シュール)の入り交じる動く映像詩(moving picture)は、ただ素晴らしいの一言です。
クルド人詩人サデク・カマンガルとしての主人公サヘルを演じたイラン伝説の俳優ベヘローズ・ボスギー(1938~ イランのイスラム革命により弾圧)が、35年ぶりに映画復帰したことも重要な出来事です。
劇中で語り部のように詩の朗読をするのは、名もなきクルド人女性です。
a0212807_20113575.jpgイランのイスラム原理主義(ホメイニ)革命で反革命の詩人の烙印を押され宗教裁判により30年の刑を宣言され獄中で死亡(と存在を消された男)サヘル(イランの俳優ベヘローズ・ボスギー、精神性のある存在感がすばらしい)、愛する夫サヘルの帰りを待ち続け妻ミナ(イタリアの女a0212807_20144583.jpg優モニカ・ベルッチ 1964~、50代ながら色褪せず美しい)、詩人サヘルの妻ミナに横恋慕し情欲抑え難くサヘルを監獄へ送り、一度だけ面会の許されたミナを監獄でレイプし彼女に付きまとうアクバル(トルコの俳優ユルマズ・エルドガン 1967~、ミナの口紅を自分の唇に塗り舐めまわす性的倒錯シーンに身震い)が、苦悩した30年の人生と地a0212807_20153133.jpg獄、偏狭な独裁政治と宗教の狂気に翻弄された三人を名演しています。
バフマン・ゴバディ監督は、新作「サイの季節」の製作・脚本・監督と一人で担い、「自分が、撮りたいものを、自由に撮る」という映画人(芸術家)としての魂が、明確に見える作品です。
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ゴバディ監督の「境界に生きる者だけが、新しい祖国を作ることができる。 サイは、首が、ないから左右に曲がれず、真っ直ぐにしか走れない。 戻る道が、ない自分と同じなんだ。」とコメントしています。
a0212807_2018387.jpgバフマン・ゴバディ監督の「サイの季節」には、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の「灼熱の魂」と同じ救いのない宗教の悲劇と神(宗教)の被害者ながら悲痛、苦難の人生を生きぬいた人間の魂の強靭さが、描かれています。
by blues_rock | 2016-06-04 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)