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心の時空

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カナダ映画の鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督 「渦」  シネマの世界<第595話>

a0212807_15553553.jpg私が、これまで見たカナダ映画の鬼才ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督(1967~)の映画は、「灼熱の魂」、「プリズナーズ」、「複製された男」、「ボーダーライン」と、どの作品もヴィルヌーヴ監督の類稀な才能が、如何なく発揮されたいずれ劣らぬ秀作ばかりです。
今日ご紹介する2000年カナダ映画「渦」(Maelström マエルストローム)は、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が、33歳の時に撮った長編映画2作目の作品ながら秀逸な脚本と演出の手際は、実にお見事で、撮影監督アンドレ・テュルパン(1966~)の斬新な映像と相俟ってカナダ映画の巨匠にして鬼才デヴィッド・クローネンバーグ監督(1943~)を彷彿とさせる個性的な作品です。
a0212807_15563324.png映画は、冒頭から暗く澱んだ怪奇(ホラー)的な雰囲気を漂わせ、魚捌き台の深海魚を想わせるグロテスクな魚が、語り部(ストーリーナレーター)としていきなりスクリーンに登場しフランス語のダミ声で「ある若い女性の物語を始めよう」と観客に語りかけてきます。
a0212807_15575368.jpgこのグロテスクな魚は、映画の随所に語り部として登場、その度に鮮魚店主然とした男にナタで胴体を真っ二つにされながらも‘ある若い女性’の物語を語り続けていきます。
‘ある若い女性’とは、この映画の主人公ビビアンと云う若い女性でファッション関係の実業家です。
彼女の母は、大女優(映画には登場しない)で、投資家の兄ピーター(登場するのは数シーンのみ)が、ビビアンa0212807_161304.jpgの事業を資金面でバックアップしています。
ビビアンを演じるのは、カナダの個性的な名女優マリ=ジョゼ・クローズ(1970~)です。
グロテスクな魚のナレーションが、終わるといきなり主人公ビビアンの妊娠中絶シーンから物語は、始まります。
ビビアンの会社は、経営不振で倒産寸前の危機にあり兄も資金援助を打ち切ると通告して来ました。
ビビアンは、堕胎による体調不良にも関わらずストレスを発散するためバーで酒を飲み酔いながら車を運転してa0212807_1620215.jpg帰る途中、誤って初老の男をはねてしまいました。
気が、動転しパニックになったビビアンは、そのまま走り去りました。
家に帰ったもののビビアンのショックは、大きく不安と良心の呵責さらに交通事故対処の迷いと決断の付かない焦りが、さらなるストレスになりました。
a0212807_16203883.jpg翌朝早く、彼女は、交通事故を起こした現場に戻りますが、人をはねた痕跡もなく警察への通報もありませんでした。
ビビアンの車にはねられた初老の男は、頭から血を流し自宅に帰り台所のイスに座りそのまま息絶えていました。
ビビアンは、警察に自首する勇気もなく、さりとて彼女の不安と焦りが、消えることもありませんでした。
彼女は、死なせてしまった男の葬儀に黙って参列しノルウェー人の息子と出遭いました。
a0212807_16211167.pngマリ=ジョゼ・クローズ演じる‘ある若い女性’のビビアンは、エキセントリックで危うく、語り部のグロテスクな魚が、語る‘世界は前向きにしか進まない’を具現していきます。
この映画のストーリーは、リアリズムそのものながらグロテスクな魚が、背景を喋り、劇中「渦(マエルストローム)」や水の映像が何度も登場、さらに斬新にしてミステリアスなa0212807_16234219.png映像のホラーのような雰囲気が、シュールにして不思議な美しさを醸し出しています。
サウンドトラックの音楽の使い方も上手く、フランスのシャンソン歌手シャルル・アズナブール(1924~ 現在91歳)が、愛を激しく謳いあげる一方で、アメリカのブルース歌手トム・ウェィツ(1949~ 現在67歳)は、低く唸るような声で詩を朗読ようにa0212807_16284146.jpg歌い、その両者のメリハリが、映画に緊張感を持たせ、選曲したヴィルヌーヴ監督の音楽センスの良さも光ります。
この夏から撮影の始まるヴィルヌーヴ監督(左写真)の次回作「ブレードランナーⅡ」が、どんな新ブレードランナーになるのか私は、今から心中ワクワク楽しみにしています。
by blues_rock | 2016-05-31 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)