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心の時空

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アクトレス  シネマの世界<第594話>

フランスの名女優 ジュリエット・ビノシュ(1964~ 出演時50歳)とアメリカの新鋭女優 クリステン・スチュワート(1990~ 出演時24歳)の共演を見たくて2014年フランス・スイス・ドイツの合作映画「アクトレス」を見ました。
a0212807_9501399.jpgアメリカの若手女優 クロエ・グレース・モレッツ(1997~ 出演時17歳)が、ジュリエット・ビノシュ演じる往年の大女優にからむ若手人気女優役で出演、やはりと云うか当然と云うか二人の名女優との差は、歴然としていました。
日本公開のタイトル「アクトレス~女たちの舞台」は、まったくいただけません。
映画の原題「Clouds of Sils Maria (シルス・マリアの雲)」とは、スイス、シルス・マリアの山岳地形が、創りだす珍しい自然現象「マローヤの蛇」と呼ばれる雲のこと、さらにシルス・マリアとは、‘マリアの化身’という意味なのだとか、これが、映画の重要なポイントになります。
日本公開のタイトル名「アクトレス(女優) 女たちの舞台」は、ナンセンス極まりなくオリヴィエ・アサヤス監督a0212807_95150100.jpg(1955~ 「夏時間の庭」)の秀逸な脚本(ミステリアスな物語)と見事な演出が、台無しです。
この映画をアクトレス(女優三人)の華やかなドラマとしてご覧になった方は、たぶんあまり面白くなかったろうと推察します。
映画の見かたをがらりと変えプロットどおりシルス・マリアのマローヤ峠をイタリアからスイスに向かって吹いてくa0212807_9523192.jpgる南の湿った風が雲となり、マローヤの谷を蛇のようにくねくねと曲がりながら流れ込んで来る雲「マローヤの蛇」に、きちんとスポットを当てて見るとクリステン・スチュワート演じる役柄は、極めて重要で、シルス・マリア(=マリアの化身)に見えてきます。
この映画は、「マローヤの蛇」の舞台に20年ぶりに出演するためシルス・マリアに向かう大女優のマリア(ジュリa0212807_9563386.jpgエット・ビノシュ)とマリアのマネージャー(個人秘書)ヴァレンティン(クリステン・スチュワート)、世代の離れた女性二人の物語です。
映画の冒頭、マリアは、戯曲「マローヤの蛇」を書いた劇作家、彼女にとって無名女優だった自分を「マローヤの蛇」の舞台に大抜擢してくれた恩人の劇作家が、流れ雲「マローヤの蛇」の見える谷で自殺したと個人秘書のヴァレンティンa0212807_9572672.jpgから聞くところからドラマは、展開して行きます。
シルス・マリアは、文学者のトーマス・マンやマルセル・プルースト、哲学者のニーチェなどが、度々訪れ長期滞在、創作や思索する場所でした。
とくに晩年のニーチェは、シルス・マリアで過ごすことが、多くもしかしたらシルス・マリアの雲「マローヤの蛇」を見て「永劫回帰」のインスピレーションを得たのだとしたら‥いや、そこまで深く考えなくても劇中ヴァレンティンa0212807_9585447.jpgが、独り車を運転してマローヤ峠に差しかかったとき視界ゼロの雲(濃霧)に包まれ精神錯乱するシーンは、意味深長です。
もう一つ、マリアとヴァレンティンが、「マローヤの蛇」を見ようと山に出かけ雲の見える頂に差しかかるとヴァレンティンは、突然怯え、マリアが驚いて振り向くとすでにそこにヴァレンティンの姿は、無く以来二度とマリアの前に現われないシークエンスもミステリアスです。
a0212807_1013483.jpg筋立てに往年の名画「イヴの総て」(1950)を想わせるところが、少しあるものの何と云ったってクリステン・スチュワート演じるヴァレンティン(この役でアメリカ人女優として初めてフランスのセザール賞助演女優賞を受賞、「アリスのままで」の次女役も秀逸)の存在は、重要でした。
撮影監督ヨリック・ル・ソー(1968~)の撮った美しい映像やさらにプロダンション・デザインのフランソワ=ルノー・a0212807_102072.jpgラバルテの役割も大きいと思います。
サウンドトラックに流れるヘンデルほかのバロック音楽が、各シーンにぴったりで、とくに私の好きなパッヘルベルの「カノン」は、マローヤの雲(マローヤの蛇)が、流れるシーンとエンディングの2回流れ祝着至極、うっとりと聴きました。
by blues_rock | 2016-05-29 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)