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心の時空

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グランド・ジョー  シネマの世界<第593話>

アメリカの映画監督デヴィッド・ゴードン・グリーン(1975~)の作品を見るのは、この2013年映画「グランド・ジョー」が、初めてです。
アメリカのベテラン俳優ニコラス・ケイジ(1964~)と新鋭俳優のタイ・シェリダン(1996~「ツリー・オブ・ライフ」、a0212807_1722793.jpgMUD マッド」の少年役は秀逸)が、共演した映画「グランド・ジョー(Joe)」は、なかなか秀作で、グリーン監督の優れた演出能力を感じる作品でした。
私は、今までニコラス・ケイジの出演した映画(彼は俳優として年3、4本ペースと多い)を少なからず見ていますが、非凡な俳優(アカデミー賞主演男優賞を受賞しているので名優の一人)なのか、平凡な俳優(見るに堪えないB級映画にも出演する三流役者)なのかよく分からない不思議な俳優です。
一方、新鋭のタイ・シェリダンは、子役として出演した作品が、監督ならびに脚本に恵まれたこともあり演技者として高い評価を得ており、この「グランド・ジョー」でも酒乱の父親による容赦ない暴力に耐えながら必死で家族を守る不遇な少年役を名演しヴェネチア国際映画祭でマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞しました。
a0212807_17274023.jpg注目すべき出演者は、酒乱で暴力を振るう父親を怪演したゲイリー・ポールター(1959~2013)です。
ゲイリー・ポールターは、本物のホームレスからキャスティングされた演技経験のない素人ながら、その自堕落な‘迫真の演技(人間性の破滅した実在感)’が、すばらしく(見ている者が彼の非人間性に怒りを覚えるくらい上手い)、彼は、映画の撮影が、終了するとまたホームレスになり、映画公開の前にホームレス収容キャンプの浅瀬で溺死体で発見されました。
a0212807_17282720.jpgさて、映画のストーリーですが、アメリカ南部の寂れた田舎町で暮らすジョー(ニコラス・ケイジ、この役は彼の最高傑作と思います)は、荒くれの前科者ながら地元で日雇いの労働者を雇い林業の下請け(古い松の木を薬品で枯らす仕事)に専念していました。
ある日、ジョーは、仕事を探しているという15歳の少年ゲイリー(タイ・シェリダン)を雇いました。
少年の家は、極貧で生活費である少年の給料が、丸ごと酒に酔い暴力を振るう父親(ゲイリー・ポールター)にa0212807_17324789.jpg奪われていることをジョーは、やがて知りますが、見て見ぬふりをしていました。
映画では、アメリカ南部の閉塞した貧困社会、その鬱屈し歪んだ環境の中で暮らす人びとの荒んだ日常が、ドキュメンタリーのように淡々と描かれていきます。
生活のため日雇い労働者として古い松林に枯葉剤の液剤を散布し松の木を痛めつけるのと同じように映画に登場する南部の人物たちもまた現実に痛めつけられていました。
a0212807_17331869.jpgそんな現実に抗いながら爆発しそうになる感情を抑え、前科者の過去を捨て額に汗し真面目に生きようとするジョーは、鬼畜のような父親から虐げられる母親や酒代のため売られそうになる妹を守るため必死になっているゲイリーを見て、若いころ自棄を起こし激情に任せた暴力事件で服役した自分の二の舞にならないよう彼の面倒を見るようになりました。
劇中、たびたび出て来る暴力シーン(簡単に人が殺される)が、見ている者の気持ちを暗くやり切れなくさせるだa0212807_1734072.pngけに、荒くれ者ジョーとゲイリー少年の友情、ゲイリーの虐げられた家族への愚直な愛は、歪んだアメリカ社会の醜悪な暗部を照らす希望として見ている者の心を救います。
デヴィッド・ゴードン・グリーン監督の「グランド・ジョー(Joe)」は、クリント・イーストウッド監督の2009年作品「グラン・トリノ」と映画のプロット(社会正義の継承精神)が、重なりアメリカ映画の秀作として高く評価したいと思います。
a0212807_1735621.jpgアメリカ南部の狂気と退廃が、アメリカの一流芸術作品(映画・文学など)を生みだすという現代アメリカ社会の皮肉は、単にブラック・ジョークとして片付けられない根源的に歪み病んだ精神構造と文明の問題点を孕んでいるように思います。
by blues_rock | 2016-05-25 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by j-machj at 2016-05-25 21:09
ニコラス・ケイジって、確かにつかみどころのない俳優ですね。
コメディ以外は、なんでも出演しているような気がします。
ニコラス・ケイジの出演する映画は、見ている分には退屈しないので、ニコラス・ケイジが出演しているというだけで、レンタルはついつい借りてきます。
でも、何も印象に残らないものが多いです。
そんな中で、「ロード・オブ・ウォー」は好きでした。
これは、かなりブラックコメディの要素が入ってますが、ノンフィクションに近いのではないだろうか?
と思いました。


Commented by blues_rock at 2016-05-26 02:06
ロード・オブ・ウォー‥武器商人‥、そういえば、私も見た憶えがあります。
実際、権力者は、利益のない(儲からない)戦争をするはずもなく、j-machjさんの言われるとおりリアリティを感じました。
世界の紛争や戦争の裏には、パナマやケイマン諸島に秘密の銀行口座をもつ軍人(将軍・司令官)や政治家(大統領・首相)と組んだこんな武器商人が、大勢いるんだろうなと思いました。
何せニコラス・ケイジは、映画への出演が、あまりに多く映画を見てもすぐ忘れてしまいます。
ちなみに、ニコラス・ケイジの出演料(ギャラ)は、1本15億円とか、それで債務不履行したり、税金の滞納したり‥不思議な俳優です。