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心の時空

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ザ・トライブ  シネマの世界<第590話>

「トライブ(Tribe)」とは、種族という意味の英語です。
2014年ウクライナ映画「ザ・トライブ」に登場する人たち全員が、聾唖者でセリフ(会話=コミュニケーション)は、すべてa0212807_10595498.jpg手話、映画に字幕や音楽(サウンドトラック)がなく、聴こえて来るのは、自然の音と人間の生活音だけと云う前代未聞の不思議な佳作映画でした。
監督・脚本は、ウクライナの新人監督ミロスラヴ・スラボシュピツキー(1974~)でこの「ザ・トライブ」が、長編映画デビュー作品です。
製作・撮影・編集は、アンジェイ・ワイダ映画スクール出身でドキュメンタリー作家のヴァレンチヌ・ヴァシャノヴィチ(1971~)が、担っています。
映画は、聾唖の少年セルゲイ(グリゴリー・フェセンコ 1994~ 映画初出演、ストリートチルドレンの出自)が、路面電車を降り聾唖の寄宿学校へ向かうところから始まります。
聾唖学校には、教師・生徒・用務員などと大勢の人たちが、いるのに人間の声のまったくしない健常者には、異a0212807_1134732.jpg様と映る聾唖学校独特の(特徴的な)閉塞感が、次第に漂い始めます。
セルゲイは、トライブリーダーの愛人でイタリア行きの偽造パスポートを手に入れるため売春している少女アナ(ヤナ・ノヴィコヴァ 1993~ スラボシュピツキー監督に見出され映画初出演ながらオールヌード、激しいセックスシーン、闇の妊娠中絶シーンと体当たりで熱演)と知り合いa0212807_112344.jpgアナに恋をしました。
やがて映画を見ている者は、聾唖者寄宿学校にトライブ(種族)という序列(ヒエラルキー)の厳しい犯罪組織があり、窃盗や売春など社会悪の温床になっていることを知ります。
この様子をスラボシュピツキー監督とヴァシャノヴィチ撮影監督は、手持ちカメラの長回しによりドキュメンタリー映像を撮るようにa0212807_1144657.jpg
演出し、撮影しています。
登場人物は、全員聾唖者で、彼らの背景や心理(感情や心情)描写について一切説明がなく、彼らの手話や身振り手振り、顔の表情、眼差しなどで、見る者は、スクリーンに映る彼らをじっと見ながら聾唖者の彼らと向き合い、彼らに何が起きているかを想像し理解して行くと云う初めてa0212807_1181189.jpgの映画観賞体験に身を委ねるしかありません。
映画の終盤、アナが、売春で蓄えた資金でやっと偽造パスポートを手に入れイタリアへ行こうとした矢先、アナを手放したくないセルゲイは、彼女からパスポートを取りあげ喰いちぎりズタズタにしてしまいます。
トライブのリーダーと手下たちは、セルゲイを袋叩きにし、瀕死の重傷を負わせますが‥ラスト、今度は、セルゲイによる過激な報復バイオレンスシーンでエンディングになります。
a0212807_11121444.jpg「ザ・トライブ」は、R18+の映倫指定(18歳未満入場禁止)ながらスラボシュピツキー監督が、意識して演出したのか、映画プロットのコアなシーンである‘暴力(バオレンス)とセックス’の描写にリアリティ(生々しさ)が、欠けており(演出の手加減を感じ)私は、もっと生々しく大胆で良かったのではないかと残念に思いました。
by blues_rock | 2016-05-17 00:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)