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心の時空

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浮 雲  シネマの世界<第586話>

名匠成瀬巳喜男監督(1905~1969)が、1955年(昭和30年)に発表した日本映画の名作「浮雲」は、昭和を代表する女性作家 林芙美子(1903~1951)の原作を名脚本家 水木洋子(1910~2003 )の脚本で撮った成瀬監督のa0212807_3321862.png最高傑作です。
成瀬巳喜男監督は、どうしても小津安二郎監督、溝口健二監督、黒澤明監督の陰に隠れて知名度が、低いものの世界では、日本映画第4の巨匠(フランス映画評論誌「カイエ・デュ・シネマ」)と呼ばれています。
名匠小津安二郎監督は、「成瀬の“浮雲”は、俺にはできないシャシン(映画のこと)だ」と高く評価、黒澤明監督も成瀬監督を一番尊敬していて「映画a0212807_3472978.gifのエキスパートで何でも一人でやってしまう職人監督」と称賛しています。
成瀬監督は、主人公の男女が、戦時中の昭和18年、日本占領下のヴェトナムで出会い関係をもち、敗戦後の昭和21年、引き揚げて来た女は、先に引き揚げていた家庭ある男と逢瀬を重ね、さらに他の女たちと関係をもちながらも難事になると女を利用する不実な男からどうしても離れられず、ドロドロとした男女関係を続け、男が、やっと見つけた仕事で屋久島に行く男に無理やり同行し最期病気で倒れて死ぬまでをモノクロ映像による重苦しい雰囲気と敗戦直後の暗鬱な社会的背景に重ねて見事に表現しています。
a0212807_349015.png主人公の女 ゆき子を名女優の高峰秀子(1924~2010 1954年名作「二十四の瞳」、1957年名作「喜びも悲しみも幾歳月」などで毎日映画コンクール主演女優賞8回)が、不実な男の裏切りに苦しみ、生きるため身を売り、それでも男から離れられない自分を愚かな女と思いながらも恋慕の情を断ち切れない女を哀切に演じています。
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もう一人の主人公、女にだらしなく優柔不断で刹那的な男の富岡を往年の名優森雅之(1911~1973)が、憂いと翳りのある存在感の本領発揮し、ゆき子に不実な男のズルさを好演しています。
a0212807_3503232.jpg見ていて何ともやり切れない映画ですが、名監督 成瀬巳喜男、名女優 高峰秀子ともに代表作となる良い作品で傑作映画です。
高峰秀子は、55歳で引退するまでの女優人生に400本の映画出演(成瀬監督作品には17本出演)、日本映画史の女優部門の第1位にランクされています。
a0212807_3514239.png名優の仲代達矢は、「監督以外なら高峰秀子さんが、恐かった」と述懐しています。
実生活(プライベート)では、子供のころから映画の名子役として引っ張り凧ながら大家族を養うため継母から猛烈に働かされ学校に行かしてもらえない女優業が、嫌いで仕方なかったとか、温かい家庭に憧れていた高峰秀子は、映画監督の松山善三と結婚すると主婦として夫に尽くし、さらに頭脳明晰なa0212807_3521644.pngエッセイストとなり、趣味で収集していた骨董品の目利き(高峰秀子は中島誠之助を‘セイちゃん’と呼び、彼は‘姐さん’と慕っていたとか)でもありました。
哀切な女ゆき子の心情を表わすような高峰秀子の名言に「人間は一人では生きることも死ぬこともできない哀れな動物と私は思う」があります。
a0212807_3532584.jpg共演者としてゆき子と無理やり関係をもちイカサマ新興宗教の教祖となる義兄を演じる性格俳優山形勲(1915~1996)の存在感も秀逸で、ゆき子の目の前で富岡を誘惑する勝気な若い女を当時新人女優の岡田茉莉子(1933~ 出演時22歳)が、好演しています。
他にも名優加東大介や名脇役女優の千石規子(女優の中で黒澤明監督作品に最多出演)など芸達者な俳優たちが、共演し脇をしっかり固め名作に華を添えています。
日本映画を代表する稀代の名監督 小津安二郎監督、黒澤明監督が、称賛する成瀬巳喜男監督の名作「浮雲」は、切ない映画ながら必見の価値ある日本映画の傑作です。
by blues_rock | 2016-05-05 00:05 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)