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心の時空

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アレクサンドリア  シネマの世界<第576話>

スペインの鬼才映画監督アレハンドロ・アメナーバル(1972~)の作品は、1997年の「オープン・ユア・アイズ」、2001年の「アザース」、2004年の「海を飛ぶ夢」、そして2009年の「アレクサンドリア」と見ていますが、アメナーバル監督は、理性および知性ならびに表現才能を兼ね備えた賢人であると思います。
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「アレクサンドリア」の原題は、「アゴラ(agora)」つまり‘広場’(ローマ帝国時代に集会や交流、自由な討論が、行なわれた場所のこと)のことでローマ帝国は、かつて西方のブリテン島(イギリス)、イベリア半島(スペイン)から地中海沿岸地域、北アフリカ、中近東一帯さらに東方のバビロニア(イラク)まで400年にわたり統治、軍事・政
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治・経済・宗教・文化文明のすべてを支配「すべての道はローマに通ず」と称された繁栄を謳歌していました。
映画は、ローマ帝国の支配下にあったエジプトの交易都市アレクサンドリアを舞台に非科学的な衆愚と排他的宗教(映画ではキリスト教)の蔓延により4世紀に滅亡するローマ帝国を描いています。
a0212807_2318959.jpg主人公は、古代エジプトに実在した女性数学者にして天文学者そして新プラトン主義の哲学者ヒュパティア(370~415、キリスト教徒の虐殺により惨殺死、ヒュパティアのプロファィルなど詳細は こちら)という女性でイギリスの女優レイチェル・ワイズ(1970~)が、熱演しています。
古代ギリシャの数学者・哲学者ピタゴラス(紀元前582~紀元前496 ピタゴラスの定理の確立者)を祖とする古代ギリシャの数学・科学・哲学とオリエント文明が、融合したヘレニズムの文化学術は、地中海の交易都市としてa0212807_2319963.jpg栄えたアレクサンドリアに文献として集められ、ナイル河湿地帯に豊富にあるパピルス(世界最初の紙)の巻物に記録されアレクサンドリアの大図書館に収められました。
その数70万巻と伝えられ、蔵書数70万巻と云う量は、現在の市立図書館や大学図書館くらいある膨大な量で、そのすべてが、思想・哲学・数学・科学・天文学・文学など知性に関する書物であったことに驚き畏れ入るばかりです。
a0212807_23231441.jpgヒュパティアは、アレクサンドリアの図書館で数学と天文学を学び新プラトン主義のギリシャ哲学を研究していました。
ヒュパティアの元には、真理を追求する多くの青年たちが、集まり、自由闊達な討論と意見交換を通して宇宙や科学のナゾを解明していました。
ヒュパティアたちは、4世紀のアレクサンドリアで「もしかしたら地球が、太陽の周りを回っているのではないか? それも地球の円周は、楕円ではないか‥」と仮説を立て思考していました。
a0212807_2324253.jpg16世紀ドイツの天文物理学者ケプラー(1574~1630)が、地球の楕円周期を証明(ケプラーの法則)する1100年以上も前のことでした。
キリスト教会異端審問所が、イタリアの物理学者にして天文学者のガリレオ・ガリレイ(1564~1642)に地動説は、神への冒涜として宗教裁判にかけ有罪が、宣告されたときガリレオは、「それでも地球は動く」とつぶやいたのが、17世紀です。
a0212807_23254955.jpgイングランドの物理学者・自然哲学者アイザック・ニュートン(1642~1727)が、万有引力の法則を発見したもの17世紀です。
聡明な哲学者にして頭脳明晰な数学者、天文学者であったヒュパティアは、常に真理を追究し、真実を解明する科学を信奉するため、偏狭で非科学的なことを強制するキリスト教を断固拒否しました。
「考えるあなたの権利を保有してください。なぜなら、まったく考えないことよりは、誤ったことも考えてさえすれば
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良いのです。」さらに「真実として迷信を教えることは、とても恐ろしいことです。」と門下生たちに教えました。
ヒュパティアは、魔女として真理と科学を嫌悪したキリスト教総主教キュリロスに率いられたキリスト教徒らに全裸にされに生きながらカキの貝殻で肉をえぐられ殺され、そのあと切り刻まれて見世物にされ焼却されました。
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a0212807_23283042.jpgこの虐殺者キュリロスは、この事件から1467年もの後の1882年、ローマ法王は、何を狂ったのかキュリロスを‘聖人’の列に加えました。
当時のキリスト教会とキリスト教狂信者の蛮行により破壊されたアレクサンドリア図書館所蔵の人類の至宝(知性)、彼らに虐殺された聡明な叡智ある哲学者や明晰な頭脳をもつ科学者たちの不在は、やがてローマ帝国を滅亡させ、キリスト教に蹂躙されたヨーロッパを数百年にわたって暗黒世界へ追いやりました。
映画の詳しいストーリーは、こちらをご参照ください。
いま地球上の至るところで起きている人間の愚行を目の当たりにするときアメナーバル監督の慧眼は、人類を幸福にするはずの道具である宗教、思想、信条が、少しばかり違うだけで対立し暴力(虐殺・テロ・凌辱・破壊)を振るうなど愚の骨頂、愚劣の極みであるという慧眼のメッセージとして映画「アレクサンドリア」に込められています。

(上と左写真)
ルネッサンスの天才画家ラファエロ・サンティ(1483-1520)が、描いたフレスコ壁画「アテナイの学堂」(縦5㍍・横7㍍)に描かれたヒュパティア(中央左下)
by blues_rock | 2016-04-04 00:04 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)