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心の時空

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市民ケーン  シネマの世界<第572話>

a0212807_11231256.jpg監督・製作・脚本・主演と八面六臂の天才映画人オーソン・ウェルズ(1915~1985)が、1941年、26歳のときに発表した処女作が、不朽の名作「市民ケーン」です。
世界最古(1933年設立)のイギリス映画協会(BFI)が、10年に一度、映画専門家(監督と評論家)対象に調査し映画史ベスト・ランキングとして公表、「市民ケーン」は、1962年から2012年まで50年間、第1位でした。2012年の公表でヒッチコック監督作品の「めまい」が、第1位に選ばれ50年ぶりの首位交代です。 (こちらの記事を参照ください。)
今でこそ世界中の映画監督が、‘普通に使う撮影技法’となった斬新なカットバック(過去と現在を交錯させて描く構成)の多用やパンフォーカス(=広角レンズを使用したディープフォーカス)、カメラの長回し(=ワンシーン・ワンカット)、ローアングル、さらに極端なクローズアップなど当時としては、極めて革新的かつ画期的な映像表現でした。
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オーソン・ウェルズの制作スタッフも錚々たる顔ぶれで往年の名撮影監督グレッグ・トーランド(1904~1948)、
音楽バーナード・ハーマン(1911~1975 1949年映画「第三の男」の音楽監督、アントン・カラスのチター演奏は
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とくに有名、ヒッチコック監督作品多数の音楽監督、1976年映画「タクシードライバー」の音楽が遺作)、編集ロバート・ワイズ(1914~2005、後に1961年ミュージカル映画「ウエスト・サイド物語」ならびに1965年ミュージカル
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映画「サウンド・オブ・ミュージック」でアカデミー賞作品賞と監督賞を2度受賞いずれもアメリカ映画を代表する巨匠たち)など、この映画には、映画創成期の若いエネルギーが、みなぎっています。
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主人公の新聞王ケーンは、むろんオーソン・ウェルズが、主演し映画の重要な役どころとなるケーンの親友リーランドは、オーソン・ウェルズの盟友ジョゼフ・コットン(1905~1994 1949年の名画「第三の男」主演)が、好演し
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ています。
権力欲に憑依(とりつ)かれた新聞王ケーンが、波乱万丈の人生最期に「バラのつぼみ(ローズバッド)」と云う
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言葉を遺して孤独死します。
この謎の言葉「バラのつぼみ(ローズバッド)」の意味を探るために新聞記者が、新聞王ケーンの過去を取材し
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ていくうちに彼の孤独な真の姿が、浮かびあがっていくというプロットの映画「市民ケーン」は、ちょっとしたサスペンスにも似たストーリーで展開していきます。
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「市民ケーン」の製作前に主人公である新聞王ケーンと愛人のスーザンが、実在の新聞王ハーストと愛人マリオンにそっくりという情報を入手したハーストは、自分を侮辱していると憤慨し当時のメディアを支配する権力と
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大資産で新進気鋭の映画人オーソン・ウェルズ(当時24歳)のプランを潰そうとしました。
そして、映画の製作と公開を妨害するためにハーストは、自分の持てる権力と影響力をすべて行使(評論家の
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買収、新聞での酷評、上映劇場への圧力など)しました。
オーソン・ウェルズとスポンサーのRKO(当時メジャーの映画会社)は、その圧力と妨害に屈せず抵抗するものa0212807_115950100.pngのハースト側の徹底した攻撃に、上映館数が、激減し「市民ケーン」は、興行的に成功しませんでした。
一方、映画を愛する映画ファンや評論家は、斬新な映画「市民ケーン」を絶賛しました。
アカデミー賞では、9部門で受賞の有力候補にあがりましたが、ハースト側の受賞妨害工作は、手を緩めず「市民ケーン」が、受賞したのは、脚本賞だけでした。
現在、このハースト側の妨害工作に屈服した当時のアカデミー賞選考委員会は、アカデミー賞史最大の屈辱と最悪の汚点を残したとして酷評されています。
a0212807_1204951.jpg映画の劇中、新聞王ケーンは、自分の支配欲(権力欲)のためなら手段を選ばず違法な世論操作も平気、手の中で全アメリカのメディア(マスコミ)を転がし新聞の発行部数が、増えるなら何でもする‥戦争をでっち上げ、証拠写真のすり替え、記事の捏造など歯牙にもかけないインチキな扇動ジャーナリズムを作りあげました。 (上写真:「市民ケーン」撮影中のオーソン・ウェルズ監督)
a0212807_12382328.jpg実際、新聞を売るためにアメリカとスペインを戦争させた新聞王ケーンならぬハーストの亡霊が、次期アメリカ大統領候補の一人に憑依、さらにその悍(おぞま)しい大統領候補(ルシファーの化身)に憑依(とりつ)かれた衆愚のアメリカンゾンビの狂乱に、私は、何か不吉なものを感じる今日この頃です。

右写真:永遠の映画人 オーソン・ウェルズ監督
by blues_rock | 2016-03-23 00:03 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)