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心の時空

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キャロル  シネマの世界<第563話>

異才トッド・ヘインズ監督(1961~)が、8年ぶりに撮った新作「キャロル」を見ました。
「キャロル」は、名作映画の三元素‥監督・脚本・俳優、そのいずれをとっても‘文句なし’の傑作映画です。
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まず監督のトッド・ヘインズ監督ですが、「キャロル」のプロットである1950年代アメリカの保守的な時代を背景に、女性ゲイ(レスビアン)の心に秘められた‘微かな瞬間’を掬いとる演出の巧さは、自らもゲイであるヘインズa0212807_1515866.jpg監督自身の繊細な心の襞(デリカシー)が、見事に表現されていて‘すばらしい!’の一言です。
映画を表現道具とする映像芸術について、映画批評家でない私は、上手く文章にできませんが、女性二人の恋(同性愛の心の動き)を切なくも美しい映像に表現できる才能をもつヘインズ監督は、演出の天才です。
a0212807_1524172.jpg脚本は、自らも映画監督にして脚本家であるフィリス・ナジ(1962~)でミステリー作家パトリシア・ハイスミス(1921~1995)が、1952年に発表した「The Price of Salt」を原作としています。
パトリシア・ハイスミスの小説を原作とした映画で特に有名なのが、アルフレッド・ヒッチコック監督の1951年作品「見知らぬ乗客」ならびにルネ・クレマン監督の1960年作品「太陽がいっぱい」a0212807_1553854.pngです。
愛し合う女性ゲイ(レスビアン)の二人を演じるのが、キャロル役のケイト・ブランシェット(1969~ 「キャロル」出演時46歳)とテレーズ役のルーニー・マーラ(1985~ 「キャロル」出演時30歳)、この名女優二人の演技は、‘すごい!’としか言いようがありません。
とくに映画の冒頭シーンからラストシーンのショットまでケイト・ブランシェット演じるキャロルとルーニー・マーラ演じるテレーズが、お互いを見つめる眼差しを見逃すのは、瞬きするのが、もったいないくらい感動的です。
希代の女優ケイト・ブランシェットは、ウッディ・アレン監督作品「ブルー・ジャスミン」でアカデミー賞主演女優賞を受賞、ヘインズ監督作品「アイム・ノット・ゼア」では、男性の‘ボブ・ディラン’を実に個性的に演じてヴェネツィア国際映画祭で女優賞(男性を演じ女優賞)を受賞しています。
演技力抜群の若手女優ルーニー・マーラを一躍有名にしたのが、「ドラゴン・タトゥーの女」のリスベット・サランデル役です。
a0212807_1562450.jpgこの映画のリスベット役でルーニー・マーラは、アカデミー賞主演女優賞の候補になりましたが、受賞は、惜しくもメリル・ストリープに譲りました。
ルーニー・マーラは、この「キャロル」でカンヌ国際映画祭女優賞を受賞、今月末に発表される2016年アカデミー賞では、主演女優賞と助演女優賞を「キャロル」のケイト・ブランシェットとルーニー・マーラが、ダブル受賞すると思a0212807_21082.jpgいます。
愛し合う女性二人の情感あるシークエンス(シーンの連続)は、性愛シーンも含め異次元のすばらしい演技を見せてくれた名女優二人の役者ぶりに心底感服、もしこの二人が、受賞しないとしたら6千人で構成するアカデミー賞選考員(無記名投票)に「あなたたちの目は節穴か?」と質(ただ)したいと思います。
a0212807_213977.jpg「キャロル」の映像を撮った撮影監督エドワード・ラックマン(1948~)は、ヘインズ監督の2002年作品「エデンより彼方に」からヘインズ監督作品の撮影を担っています。
ラックマン撮影監督が、ビスタビジョンカメラとスーパー16mmフィルム(アスペクト比1.66)で撮影した「キャロル」の映像は、レトロな色調と相俟ってうっとり見惚れてしまう映像美を生んでいます。
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音楽監督カーター・バーウェル(1955~ コーエン兄弟監督とスパイク・ジョーンズ監督の全作品を音楽監督)のしっとりした音楽、プロダクションデザイナー キャロル・スピアのレトロな美術セット、衣装デザイナー サンディ・a0212807_2162617.jpgパウエル(1960~)の色彩とファッション・センス、さらに製作のエリザベス・カールセン(1960~)と「キャロル」には、女性関係者が、多いのも特徴です。
映画が、あまりにすばらしいのでストーリーを後回しにしていました。
1950年代アメリカ東部のニューヨークと西部のアリゾナが、舞台です。
a0212807_2171932.jpgキャロル(ケイト・ブランシェット)は、自分が、ゲイ(レスビアン)であることを知りながら当時の道徳観(性のモラル)に縛られ良き妻、良き母であろうと努めていました。
デパート店員のテレーズは、売り場でキャロルを見て一目惚れ(セクシャル・ケミストリ)、キャロルへの恋心で自分のセクシャリティに気付きました。
a0212807_2174627.pngキャロルとテレーズは、お互い惹かれ合いながら、どう自分の気持ちを表現すれば良いのか分からず戸惑うばかりでしたが、キャロルは、テレーズを誘って旅に出ました。
現在公開中のトッド・ヘインズ監督の新作「キャロル」は、映画狂いの私が、100%自信をもってお薦めする映画です。
a0212807_2182659.jpg「キャロル」の公式サイト(こちら)を貼付いたしますので参考にしていただき、ぜひ映画館でご覧ください。
ヘインズ監督は、最も信頼できるパートナーと公言する名女優ジュリアン・ムーア(ヘインズ監督作品「エデンより彼方に」主演)と次の作品を企画中だとか、これも大いに期待し今から楽しみにしています。
(上写真:撮影の打合をするトッド・ヘインズ監督とキャロル役のケイト・ブランシェット)
by blues_rock | 2016-02-20 01:20 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)