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ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>

いま公開されている名匠スティーヴン・スピルバーグ監督(1946~)の最新作「ブリッジ・オブ・スパイ」(Bridge of Spies)を見て「さすが!スピルバーグ監督。 映画づくりが、上手いなぁ‥」と心底感心しました。
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近代映画史にその名を残す名監督となったスティーヴン・スピルバーグ監督(1946~)は、戦争映画や人道的、社会的な映画を撮るとき、娯楽性もありながらなかなか骨のある作品を今まで何作も発表してきましたが、新作ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0363244.jpgの「ブリッジ・オブ・スパイ」も円熟味の増した見せる映画の名作でした。
スピルバーグ監督には、SFや冒険活劇などの娯楽映画にも多くのヒット作品があり、世界最高のヒットメーカーの証しとして‘監督作品’・‘製作(プロデュース)作品’ともに歴代興行収入の第1位になっています。
ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0375975.jpg今でも映画少年のころの初心を忘れない熱心な映画ファンであるスピルバーグ監督は、巨匠と称され世界的な映画監督になってもなおこの‘映画へのこだわり’をもち、デジタル撮影主流の現在(いま)においても自作映画の撮影には35㍉のセルロイド製フィルムを使用、フィルム独特の映像ニュアンスを好む映画の匠(たくみ)でもあります。
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スピルバーグ監督の作品は、撮影監督ヤヌス・カミンスキー(1959~ 1993年「シンドラーのリスト」でアカデミー賞撮影賞受賞))、編集マイケル・カーン(1935~ スピルバーグ監督作品でアカデミー賞編集賞を3回受賞)など製作スタッフのほとんどが、スピルバーグ組ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0411991.jpgの常連メンバーです。
「ブリッジ・オブ・スパイ」では、この常連組に加え脚本を名脚本家と知られるジョエル&イーサン・コーエン兄弟監督が担い、プロダクション・デザインや衣装も1950年代アメリカを完璧に再現、当時築かれ始めていたベルリンの壁などの時代考証と併せ非の打ちどころのない映画でした。
ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_044251.jpg主演は、スピルバーグ監督作品4作目(1998年「プライベート・ライアン」、2004年「ターミナル」他)となる名優トム・ハンクス(1956~ 名匠ロン・ハワード監督作品にも4作品に出演)、共演もマーク・ライランス(1960~)、エイミー・ライアン(1969~)、アラン・アルダ(1936~)、オースティン・ストウェル(1984~)ほか出演者たち皆な名優ならびに中堅さらに若手俳優(子役も含め)とブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0462233.jpgいずれも存在感(リアリティ)のある演技を披露しています。
「ブリッジ・オブ・スパイ」は、アメリカとソ連(現ロシア)の軍事対立が、核戦争の引き金にも成りかねない一触即発の緊張状態(冷戦下)の当時(1950年代から60年代にかけて)、実際にあった事件(実話)を描いたサスペンスタッチの歴史ドラマです。
ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_051262.jpg物語の骨子は、1957年ニューヨークでFBIに逮捕されたアベルというソ連スパイ(マーク・ライランス 彼の抑制された静かな演技がすばらしい)の国選弁護人として民間の保険専門弁護士ジェームズ・ドノヴァン(トム・ハンクス)が、選ばれました。
ドノヴァンは、アメリカ国家の司法制度を世界にパフォーマンスするため半ば強制的に国選にされたとは云え、ソ連のスパイ容疑でブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0532249.jpg逮捕されたイギリスパスポートをもつアベルの弁護を引受けたことからアメリカ国中の非難を浴びますが、自分の弁護士職務をまっとうし検事の死刑求刑に反論、さらにドノヴァンは、ソ連スパイに容赦ない愛国的な判事とも駆け引きし(この経過が映画後半に彼のスパイ交換極秘任務に繋がります)アベルに死刑の判決を下さないよう交渉、懲役30年の刑にさせました。
ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_054630.jpgこのソ連スパイ事件から5年後の1962年、アメリカ空軍の秘密偵察機が、ソ連領空内でミサイル撃墜されパイロット(オースティン・ストウェル)は、敵国スパイとしてソ連に捕えられました。
お互いスパイの事実を隠蔽したい両国政府は、秘密裏にスパイ交換を画策、アメリカ政府が、交渉人として指名したのは、軍人でも政治家でもないアベルの弁護士であった民間人のドノヴァンでした。
ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_0543529.jpg交渉の場所は、ベルリンを東西に分断する壁が、築かれつつあった敵地の東ベルリンでした。
夫ドノヴァンの言うイギリス出張は、身の安全が、保障されない極秘任務であると察知した妻(エイミー・ライアン)は、心配しますが、ドノヴァンは、弁護士としての正義感と裁判の弁護を通して知ったアベルの祖国(ソ連)に対する揺るぎない忠義に尊敬の念を抱き、東ベルリンの緊迫ブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_141127.jpgした情勢を承知で危険な交渉に臨みました。
そして1962年東西ベルリンを結ぶグリーニッケ橋でお互い疑心暗鬼のスパイ捕虜交換が、行なわれました。
2時間22分の長尺映画ながら冒頭のソ連スパイ逮捕から終盤のグリーニッケ橋でのスパイ交換まで見ている者は、緊張の緩むことはなくスピルバーグ監督の演出を始め、脚本(ストーリーブリッジ・オブ・スパイ  シネマの世界<第579話>_a0212807_151714.jpg構成)、撮影(カメラワーク)、編集と制作の見事さを実感しました。
グリーニッケ橋での捕虜交換シーンの撮影にドイツのメルケル首相(右写真中央)が、見学に訪れるくらいこの事件は、ドイツの歴史にとっても重要な出来事だったのであろうと推察します。
by blues_rock | 2016-02-10 00:38 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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