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心の時空

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黄金のアデーレ  シネマの世界<第550話>

現在KBCシネマで公開中のアメリカとイギリスの合作映画「黄金のアデーレ」(Woman in Gold)は、オーストリアの国民的画家グスタフ・クリムト(1862~1918)の名画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」(1907)の所有権
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とその返還をめぐり個人(元所有者の遺族マリア・アルトマンと新米弁護士のランドル・シェーンベルク)が、国家(現所有者のオーストリア政府)を訴えるという前代未聞の裁判をめぐるヒューマン・ドラマです。
a0212807_1005364.jpgイギリスのサイモン・カーティス監督(1960~)は、個人(老婦人と新米弁護士)が、オーストリア政府を訴えるという前代未聞の裁判劇をドラマチックかつ深刻に描かず、ユーモアの精神を忘れない演出により静かに理路整然と‘法と正義’を描いていきます。
カーティス監督は、戦争の不条理とくに独裁者ヒトラー率いるナチスドイツの理不尽な人道的犯罪を過去の出来a0212807_1022240.jpg事にしないで毅然とオーストリア政府を糾弾していきます。
「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」の元所有者の遺族である82歳のマリア・アルトマンをイギリスの名女優ヘレン・ミレン(1945~)が、凛とした品格とユーモアあふれる魅力的な老婦人として演じています。
「黄金のアデーレ」(アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像)が、描かれた歴史的な背景を簡単に説明するとハプa0212807_1044742.jpgスブルク家(13~19世紀)の統治するハンガリー=オーストリア帝国末期のウィーンで前衛分離派(アールヌーヴォー様式)の画家グスタフ・クリムトは、ユダヤ系財閥の娘アデーレ・ブロッホ=バウアー(1881~1925)の肖像画を制作しました。
1938年にオーストリアを併合したヒトラー率いるナチスドイツによりクリムトの絵画を含むアデーレ・ブロッホ=バウアーの家族が、a0212807_108263.jpg所有する全財産は、没収され独裁者ヒトラーやゲーリング元帥らナチス上層部で山分け(略奪)されました。
前衛芸術嫌いのヒトラー(とナチス上層部)は、クリムトの絵画に関心がなくベルベデーレ美術館にすべて保管所蔵されました。
アデーレの姪マリアは、ユダヤ人の娘ゆえにナチスから迫害され家族離散、オペラ歌手の夫とa0212807_1094568.jpgともにアメリカに亡命、姉のルイーゼとともに艱難辛苦の波乱に満ちた人生を送りました。
姉ルイーゼが、亡くなりマリアは、彼女が祖国オーストリア政府に対しナチスドイツの略奪したクリムトの絵画返還を求めていたと知りました。
映画「黄金のアデーレ」は、1998年のロサンゼルスと20世紀初頭のウィーンを行き来しながら描かれ姉の遺志を継いだ当時82歳の主人公マリアの生きた時代を映していa0212807_10102614.jpgきます。
ヘレン・ミレンのマリアに絡むのが、新米弁護士のランディを演じるライアン・レイノルズ(1976~)、ウィーンで二人を支援するオースリアの青年ジャーナリスト役にダニエル・ブリュール(1978~)、他に安定収入のある大手法律事務所を辞めてまでオーストリア政府相手の裁判にすべてを懸ける夫ランディを支える妻役にケイティ・ホームズ(1978~)など演技派揃いa0212807_10145813.jpgで、カーティス監督夫人のエリザベス・マクガヴァン(1961~)もロスアンゼルス裁判所の判事役でカメオ出演、真面目な顔でユーモアたっぷりの演技を披露しています。(詳しくはこちら「黄金のアデーレ」のプロダクション・ノートをご覧ください。)
アメリカの裁判所が、クリムトの名作「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」ほかクリムトの絵画4点は、マリアに所有権があるこa0212807_10162275.jpgとを認めました。
これによりオーストリア政府は、各分野から選出された専門委員による審理会に諮問し、その答申を受けてマリア・アルトマンへのクリムト絵画5点の返還が、決定しました。
その後、アメリカのユダヤ系企業エスティ・ローダーのオーナーが、「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」を155億円(2006年当時)で購入、現在ニューヨークの美術館ノイエ・ガレリa0212807_10201070.jpgエ(第2次世界大戦前にユダヤ人が所有しナチスドイツから略奪・没収された美術品を収集)に展示されています。
私は、1970年代半ばウィーンを訪ねたとき、ベルベデーレ美術館で「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像」を見たように記憶していますが、昨今の私の記憶障害は、映画「黄金のアデーレ」を見てそう錯覚しているのかも知れないと自信がなくなりました。
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by blues_rock | 2016-01-09 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)