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心の時空

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a day in my life

火垂るの墓(故、野坂昭如氏に捧げる)  シネマの世界<第546話>

確固たる執念(思想)をもった多才な作家野坂昭如(1930~2015)が、12月9日に亡くなりました。
a0212807_1122384.jpg享年85歳、1963年に小説「エロ事師たち」で作家としてデビューし、1968年小説「火垂るの墓」・「アメリカひじき」で直木賞を受賞、1972年当時編集長を務めていた雑誌「面白半分」に掲載した「四畳半襖(ふすま)の下張」(発禁、春画を文字にしたようなもの、永井荷風著)が、ワイセツ文書図画の頒布・陳列規定(刑法175条)違反で起訴されました。
野坂昭如の多岐にわたる才能は、作家活動のみならず放送作家・歌手(「黒の舟歌」がヒット)・作詞家(童謡「おもちゃのチャチャチャ」はa0212807_11244319.jpg有名)・タレント・政治家と広範囲に及びます。
私は、直木賞受賞小説「火垂るの墓」で初めて作家野坂昭如を知りました。
当時大学生であった私は、買ったばかりの新刊本を持ってキャンパス近くの百道(ももち)海岸へ行き、ポロポロ涙を流しながら一気に読みました。
a0212807_11251223.jpg今夜は、野坂昭如著「火垂るの墓」をもとに世界最高のアニメーション映画監督高畑勲(1935~ 「かぐや姫の物語」はアニメーション映画の最高傑作)が、脚本を書き監督した1988年のアニメーション映画「火垂るの墓」(スタジオ・ジブリ製作)をご紹介します。
アニメーション映画の傑作「火垂るの墓」は、いま拙ブログをお読みのほとんどの方が、すでに一度ならずご覧a0212807_11283161.jpgになっていることと推察いたします。
私は、この映画を見るたびに母親を神戸大空襲で失くし連合艦隊軍人の父親も戦死、後に遺された14歳の清太と4歳の幼い妹節子の兄妹が、哀れで仕方なく胸張り裂けるような切ない思いで本を読んだときと同じように悲しくて泣いてしまいます。
a0212807_11311435.jpg映画は、駅構内で野垂れ死んだ清太(衰弱死した清太の亡霊)のナレーションで始まり物語が、カットバックして展開して行きます。
両親を失くし孤児となった14歳の清太と4歳の幼い節子は、無惨な戦争を始めた大人たちの隣組が、仕切る戦時下の食料配給を受けられず、栄養失調で次第に衰弱していく妹節子を兄清太は、農家の田畑から農産物を盗み、空襲で人のいない家へ空き巣に入るなどして死に物狂いで守りました。
a0212807_1131451.pngアメリカ軍のB29で家を焼かれ憔悴した大人たちは、路頭に迷い痩せ衰えた兄妹にわずかな食料すら分け与えようとはしませんでした。
兄清太の必死の努力も虚しく栄養失調の妹節子は、清太に自分の食べ物をあげる仕草をしながら衰弱死しました。
清太は、節子の亡きがらを荼毘に付し、小さな遺骨をドロップ缶に入れ肌身離さず持ち歩き、自分も最期に駅構内で衰弱死しました。
駅員が、野原に投げ捨てたドロップ缶からこぼれ落ちた節子の骨は、ホタルとなり辺り一面に飛び交うシーンの切ないこと、カットバックする前の導a0212807_1134131.jpg入部にこのシーンがあります。
アニメーション映画「火垂るの墓」の原作となる小説は、野坂昭如氏の少年時代、戦時下の実体験が、ベースとなっているので野原を飛び交うホタルの群れは、野坂昭如氏の永遠(とわ)に鎮まらない魂の浮遊を高畑監督が、その象徴として表現したのだろうと思います。a0212807_11355812.jpg




野坂昭如氏のご冥福を心中より
お祈り申しあげます。
by blues_rock | 2015-12-28 00:08 | 映画(シネマの世界) | Comments(5)
Commented by yasi at 2015-12-28 22:50 x
この映画は以前、毎年8月になると放送されてましたよねえ。ある人は放送時間になると「節っちゃん始まるよ」と、家族に呼びかけたそうな。
私自身、何度も見ましたが切なさと憤りを禁じえません。(別の意味でね)
兄妹の悲劇は、マクロ的に見れば戦争のせいです。しかしミクロ的視点に立てば節子を死なせたのは他ならぬ清太なのです。海軍将校の息子というちんけなプライドを持ち、大人の言うことを聞かず、勤労奉仕をさぼる甘ったれな清太。それが結果的に節子を死に追いやるのです。伯母さんの態度は冷たく見えますが大人としては常識的なものです。
この時代を生きのびるなら大人から見て<よい子>にならなければ。妹を守る逞しい兄になれなかった弱い清太が嫌いです。
Commented by blues_rock at 2015-12-29 12:13
「弱い清太が嫌いです」というセンテンスにドキッとしました。
清太の弱さが、きっと私自身の弱さと重ね合わさり(対象は同じものではありませんが)悲しく・切なく・憐れになる(同情する)のだろうと思います。
同情するならカネをやれ(=身を切れ)ですよね。
私は、アニメーション映画がキライなのでほとんど見ないものの高畑勲監督作品だけは、見ています。
「火垂るの墓」は、野坂昭如原作+高畑勲監督なので思い出したようにときどき見ます。
戦争の不条理と理不尽さを市井の目で描いたアニメーション映画「火垂るの墓」には、高畑監督の戦争への怒りと併せ、映画をとおし見る者(つまり私)に「清太はお前のことだぞ」と云っているようで心がズキンとします。
Commented by 松尾真優美 at 2015-12-29 18:55 x
ご存知の通り、映画はほとんど観ていない私です。
人生の大半一日中店内で過ごしたので外が恋しくて、
真っ暗な映画館は避けてました。
ビデオやDVDが普及し多少は自宅で観るようにはなったのですが……そんな中、この映画は終戦記念日には必ずと言って良いほどTVで放送され店でも話題になります。「観るのが辛くなる映画だ」と……。だからどうしても観る勇気が出ません。長時間の仕事が終わって、さぁ後はくつろいで寝るだけ、の前に悲しいまま眠りにつく気にならず未だに見てません。
Commented by yasi at 2015-12-29 20:36 x
>松尾さま
見ないのもひとつの選択肢。それでいいのでは。
私も疲れて帰ってきた時はシリアスなものは見る気がしません。
単純でスカッとするものがいいですね。
Commented by blues_rock at 2015-12-30 01:10
松尾さん、コメントありがとうございます。
yasiさんの言われるとおり、見るも見ないも自分の選択が、すべてです。
かく言う私も自分の生理に合わない不愉快な人には近付かずイヤなところへも出かけません。
映画もしかり、人それぞれに好きな映画があり、その人の好きな映画を好きなときに好きなように見る‥私もそう、そして拙ブログに勝手なことを書いているだけです。
これからも金継ぎと同様に、映画へのコメントもよろしくね。