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心の時空

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レバノン  シネマの世界<第531話>

イスラエル・フランス・ドイツの共同製作による2009年の異色戦争映画「レバノン」は、タイトルのとおりレバノン内戦のテーマにした映画ながら戦場への視線が、戦車の銃砲塔に取り付けられた照準器(十字スコープ)を通した前線なので、映画を見る者は、正に目を覆いたくなるような戦争の生々しい現実を見ることになります。
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脚本・監督は、ドキュメンタリーの製作・監督であったイスラエルの映画監督サミュエル・マオズ(1962~)が、初めて撮った長編映画で、イスラエル軍の戦車砲撃兵として1982年のレバノン侵攻に初めて従軍した自分の体験をリアルに描いています。
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主人公は、戦争(人を殺した)経験のない戦車内の若いイスラエル兵士4人です。
作戦の目的も詳細も何も知らないまま軍の命令(移動も攻撃も外部から無線で命令される)でレバノンに侵攻した彼らは、敵地の中で戦闘の全体像を知ることなく死と隣り合わせの戦闘を強いられました。
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マオズ監督の演出ならびに映像は、狭い戦車内の兵士4人の人間関係を軸に描き‥敵地レバノンの前線で見えない敵の恐怖に怯え、極度に狭い空間で諍(いさか)い、感情的な対立は、次第に狂気を帯びて行きます。
戦車内の床を流れる小便に雑じるタバコの吸い殻やゴミ、若い兵士4人の表情を戦車内のカメラは、リアリズムa0212807_2353252.jpgあふれる映像で捉え、密室劇の緊迫した雰囲気と戦闘の緊張を醸し出しています。
戦車の外の様子は、戦車内の十字スコープ(照準線モニター)から見える景色だけ、聴こえる音も十字スコープの動く音、戦車のディーゼルエンジンの音、4人の動く音だけです。
若い兵士4人‥どこにいるか分からない不安、これからどこに行くのかも不明‥動くものを撃てば老人・女子供a0212807_23535375.jpgを殺してしまう怖さ、撃たなければ、攻撃される怯え‥無線で入る上官の命令は、いつも不条理なことばかり‥戦車内の狂気とすさまじい緊張は、反戦と言うより究極のスリラーです。
映画を見る者も4人と同じ体感をしますので、閉所恐怖症やパニック障害のある方には、お薦めできません。
「レバノン」は、ヴェネツィア国際映画祭最高賞の金獅子賞を受賞しました。
a0212807_23543946.jpg映画のラストシーンで初めて、若い兵士4人の乗っていた戦車の外の様子が、分かります。
これは、マオズ監督の名作「ひまわり」へのオマージュなのでしょうか?
「レバノン」は、マオズ監督の斬新な演出技法も秀逸ながら主人公の若いイスラエル兵4人を演じた無名の若い俳優たちによる真迫の熱演が、何より「すばらしい!」の一言です。
by blues_rock | 2015-11-09 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)