ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

ジミー、野を駆ける伝説  シネマの世界<第530話>

私が見るアイルランド映画は、アイルランドの戦争の歴史、例えば1919年~1921年のイギリスからの過酷な独立戦争や1922年~1923年のアイルランド人同士の血で血を洗う悲惨な内戦などをプロット(題材)にしており、
a0212807_1051192.jpg
それゆえにどの作品の主人公も彼らの時代の中で避けて通れない哀しい人生を背負い、そして彼らの残酷な運命を私はいつもやり切れない気持ちで見ています。
a0212807_10515789.jpg
1993年映画「父の祈りを」(ジム・シェリダン監督・製作・脚本、ダニエル・デイ=ルイス主演)1996年映画「マイケル・コリンズ」(ニール・ジョーダン監督・脚本、リーアム・ニーソン主演)、1997年映画「デビル」(アラン・J・パクラa0212807_10523968.jpg監督、ハリソン・フォード、ブラッド・ピット主演) 2008年映画「ハンガー」など、どれも史実に基づくアリティのあるヒューマンドラマで見応えがあります。
さて、イギリスの名匠ケン・ローチ監督(1936~)の2014年新作映画「ジミー、野を駆ける伝説(Jimmy's Hall)」は、2004年作品「麦の穂をゆらす風」の続編と位置付けられる作品でアイルランドの内戦が、国民に与えた癒えない心の疵とその中から芽生えた希望を描いています。
a0212807_10563488.jpg「ジミー、野を駆ける伝説」は、1932年のアイルランドが、舞台です。
アイルランド内戦終結から10年が経ち、アメリカに追放されていた元農地解放活動家ジミー・グラルトン(実在の人物1886~1945、演じているのはバリー・ウォード、初主演)は、長年苦労を懸けた年老いた母親と共に暮らすために故郷の村に還って来ました。
a0212807_10591831.jpg無欲で誠実なジミーの望みは、老いた母親の面倒を見ながら穏やかに暮らすことでした。
10年前ジミーは、小作農の貧しい村の若い仲間たちと自主的に学び人生を語らい歌とダンスに興じる集会所(コミュニティ・ホール)を自主運営していました。
その懐かしい思い出多いホールも10年の内に朽ちてあばら家になっていました。
a0212807_1114412.jpgアイルランド内戦は、表面上終結したように見えるものの大地主と癒着した権力(政治家と警察)の小作農弾圧と搾取、旧態依然の因習を村人に強制する教会が、地域全体を支配し陰鬱な閉塞的な社会にしていました。
人望のあった元活動家ジミーの元へ気心の知れた昔の仲間たちが、次第に集まるようになり、10年前リーダーであったジミーに彼らは、自分たちも団結して協力するからホールを再開しようと訴えました。
a0212807_1122710.jpgそんな暮らしの中で私利に無欲で実直なジミーは、大地主の理不尽な要求や教会の偽善的な行為を見過ごすことができなくなり、そんな彼の反権力・反権威主義の正義感は、大地主・警察・教会との諍いを引き起こすようになりました。
映画の見どころは、年老いた母が、また独り暮らしになるのを覚悟して最愛の息子ジミーを黙って見守り続ける眼差し、ジミーが、昔
a0212807_1132443.jpg
の恋人と深夜のホールで二人ダンスをするシーン、教会の権威を押し付ける神父の立場になって考えれば、解決策は見つかるはずと息巻く仲間たちを諌めながら保守的な神父を懐柔し自分たちの味方にするシーンなど‥a0212807_1135199.jpgたくさんありまが、危険人物と見做されたジミーは、裁判の要求も無視され即刻国外永久追放となりました。
ジミーの私欲のない誠実な精神を受け継いだ大勢の若い仲間たちが、警察の制止を無視して護送トラックの荷台に乗せられ港へ向かうジミーに声をかけ手を振って見送るラストシーンは、見る者の心を救済し感動します。 
(上写真:撮影中のケン・ローチ監督)
by blues_rock | 2015-11-07 00:07 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)