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心の時空

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おみおくりの作法  シネマの世界<第525話>

イタリア・イギリスの合作映画「おみおくりの作法」(映画の原題は「Still Life」)は、今年2015年1月に日本公開されたイギリスの地域民生公務員を主人公にした地味な映画ですが、映画館は、連日満席だったようです。
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監督(ならびに脚本・製作)は、イタリアのウベルト・パゾリーニ(1957~ )で、イギリスのロンドン南部を舞台に44歳の独身男で民生係の地域公務員ジョン(エディ・マーサン 1968~)の仕事を通して「孤独死した人たちの人生
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の最期」を丁寧に描いています。
孤独死をテーマにした何とも地味な映画「おみおくりの作法」が、連日盛況だったことの背景に、もはや孤独死a0212807_1112237.jpgは、他人事でなくなったというわが国の高齢化社会という現実が、あるからでしょう。
主人公のジョンを演じたイギリスの俳優エディ・マーサンは、今まで名脇役として多くの映画に出演、この映画が、彼の初めて主演作品です。
エディ・マーサンのリアリティのあるシブイ演技(実在感がすばらしい!)とウベルト・パゾリーニ監督の丁寧な演出が、融合してできa0212807_1185765.jpgた豊饒な世界を私たちは、見ることができます。
パゾリーニ監督は、孤独死した死者の身元(親族・知人など)を探し丁寧に弔うジョンの几帳面さと質素な暮らしぶりをシックな色調(トーン)で見せ、透明感のある静謐(せいひつ)な映像の中に人間味あふれる豊饒な精神を感じさせる佳作映画にしました。
a0212807_128259.jpgイタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレ監督(1956~)は、この映画「おみおくりの作法」を絶賛しています。
物語を簡単に云うと主人公の民生係ジョンの仕事は、孤独死した人たちの葬儀を行ない埋葬することでした。
故人の人生にとって最期の儀式である葬儀のために、本人の写真を探し宗教を特定、看取る人もいなかった故人に弔辞を書いてあげ、死者の葬儀にa0212807_129845.jpg相応しい音楽を選び、故人の親族(大抵の場合絶縁している)・知人(ほとんどいない)に
何とか連絡し葬儀への出席を依頼するというそんな地味な仕事でした。
上司は、ジョンの丁寧で誠実な仕事ぶりに無駄が多いと伝え行政の経費削減(公務員の人員整理)のために彼を解雇しました。
a0212807_130832.jpgジョンの最後の仕事となったのが、彼のアパート自室から見える真向かいのアパートの一室で孤独死した男性の葬儀でした。
故人は、身寄りのないビリーという初老のアルコール中毒患者でした。
ジョンは、酒瓶の散乱するビリー老人の部屋に遺された古いアルバムを見つけ、そこに貼られた笑顔で写る少女の写真を手がかりにイギリス国内を回り、ビリーの人生a0212807_1304689.jpgのピースを少しずつ集め組み立てていきました。
死者の過去(生前のビリー)を探す旅で出遭った人々と話すうちに、無頼な男であった故人の荒んだ人生にも幸せな時があったことを知りました。
古いアルバムの少女は、故人の一人娘ケリー(ジョアンヌ・フロガット 1980~)でした。
a0212807_131231.png女性とカフェに入ったことのないジョンでしたが、ケリーとカフェでお茶を飲みながら亡くなった父親の葬儀のことを知らせました。
ここからラストまでのシークエンス(映画のクライマックス)は、感動的ながら何とも切なく、ウベルト・パゾリーニ監督(左写真)が、映画「おみおくりの作法」を見ている私に「これが真実の愛(精神・魂)なのでは?あなたは、どう思う?」とメッセージしているように思えました。
by blues_rock | 2015-10-12 00:12 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)