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心の時空

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インヒアレント・ヴァイス  シネマの世界<第524話>

a0212807_212736.jpg鬼才というか天才というか、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作「インヒアレント・ヴァイス」(Inherent Vice、2015年4月日本公開)のタイトルは、海上保険でいう‘内在する欠陥(リスク)’のこと、映画では、この暗喩として‘人間生来の本能と強欲に支配された堕落’として使われています。
原作は、ノーベル文学賞候補としてノミネートされるアメリカ文の著名な作家トマス・ピンチョン(1937~現在78歳)が、2009年に発表した長編小説「LAヴァイス」です。
トマス・ピンチョンは、半世紀以上に亘る作家活動で人気もあり注目されながら発表した小説は、わずか7作品と非常に寡作な作家です。
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公式なインタヴューや会見を行なわず表舞台に登場することも皆無、写真も若いころのものだけで、私生活も謎に包まれています。
a0212807_242894.jpg自作の映画化も今まで許可したことはなく、今回アンダーソン監督に許可した「LAヴァイス」が、初めてです。
私は、アンダーソン監督デビュー作品「ハードエイト」(1996)から最新作「インヒアレント・ヴァイス」まで7作品全部見ましたが、アンダーソン監督は、デビューから16年、2012年作品「ザ・マスター」の6作品で世界三大映画祭a0212807_25194.jpgカンヌ・ベルリン・ヴェネツィアで‘監督賞’を受賞するという映画の申し子のような天才監督です。
そのアンダーソン監督のこの作品「インヒアレント・ヴァイス」へのこだわりは、相当なもので製作・脚本・監督を自ら担い、1970年ヒッピームーブメントとポップカルチャー全盛期のアシッド(幻覚と恍惚)なロサンゼルスを再現‥当時の街並みや旧式の古い車、いかにも70年代ファッションといった風俗やヘアスタイル、劇中何度も流れる‘♪ビタミンCが足りないぞ’と叫ぶロック、さり気なく聴こえて来る‘上を向いて歩こう’・‘ワンダフa0212807_2133328.jpgルワールド’など当時の音楽(サウンド・トラック)にも凝っています。
製作スタッフのプロダンションデザインや衣装(「アーティスト」でアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞したマーク・ブリッジスが担当)も優れた才能を発揮しており、すばらしい映画になりました。
デジタル撮影全盛時代に敢えて35ミリフィルムを使って1970年の情感溢れるロアンゼルス風景と風俗を撮影しa0212807_2153443.pngたロバート・エルスウィット撮影監督(1950~ 2007年「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」でアカデミー賞撮影賞を受賞)は、アンダーソン監督作品の常連(「ザ・マスター」以外全作品を撮影)なので呼吸もピッタリ、ドラッグ(マリファナ・ヘロイン)・酒・女・金をめぐりポップにしてアシッドな退廃した大都会ロサンゼルスをリアルに描いています。
a0212807_216387.jpg映画は、若い女性占い師ソルティレージュ(ジョアンナ・ニューサム 1982~)にボイスオーバー(語り部)させながら主人公のヒッピー探偵ドック(ホアキン・フェニックス 1974~ いつもラリっているマリファナジャンキー探偵を怪演)を中心とした群像劇です。
ダ・ヴィンチの‘最後の晩餐’のような意味深なワンカットシーンも登場、どこまでも意味深なアンダーソン監督のa0212807_2172749.jpgこの映画へのコダワリを感じました。
不条理な本題にストーリーが、唐突な展開なうえすぐ脱線するので映画を見ている者の頭は、混迷しますが、ムキにならずにアナーキーなユーモア(ジョーク&ギャグ)を楽しむ映画で見終わるとまたすぐ見たくなる不思議な映画です。
主人公のヒッピー探偵ドックに関わる登場人物も怪しい人物ばかり、冷凍チョコバナナ中毒のロス市警刑事ビッグフット(ジョシュ・ブa0212807_2203043.jpgローリン 1968~ 危ない刑事を怪演)、過激派にして警察のタレ込み屋にして失踪ミュージシャンのコーイ(オーウェン・ウィルソン 1968~)、検事補なのにマリファナジャンキーでヒッピー探偵ドックの愛人ペニー(リース・ウィザースプーン 1976~)、怪しげなドックの弁護士(ベニチオ・デル・トロ 1967~)、ドックのファムファタル元ガールフレンドのシャスタ(キャサリン・ウォーターストa0212807_221362.jpgン 1980~)、ナチスに傾斜するユダヤ富豪で不動産業者(エリック・ロバーツ 1956~ ジュリア・ロバーツの兄)、コーイの妻で過剰ドラッグにより歯を失くした元ヒッピーのホープ(ジェナ・マローン 1984~)、コカインとセックスしか頭にない歯科医(マーティン・ショート 1950~)などサイケデリックな人物ばかりです。
出演者には、アンダーソン監督作品の常連組も多く、過去5作品に出演している故フィリップ・シーモア・ホフマン(こちら)の姿が、この映画にないのは、何とも寂しい限りでした。(上写真:ポール・トーマス・アンダーソン監督)
by blues_rock | 2015-10-10 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(2)
Commented by 保土ヶ谷スリム at 2015-10-10 15:28 x
ご無沙汰です。ここ数年、映画はとんと見ていないですが、解説を見ていたら色々見たくなりました。
Commented by blues_rock at 2015-10-10 18:34
コメントありがとうございます。
ご無沙汰しています。
近いうちに友人とセッション・ライブを聴きに行くつもりです。