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黒衣の刺客  シネマの世界<第522話>

福岡市中洲大洋劇場で現在公開中の台湾・中国・香港・フランス合作映画「黒衣の刺客」は、台湾ニューシネマを代表する映画監督侯孝賢(ホウ・シャオシェ 1947~)が、5年の歳月をかけて撮った8年振りの新作映画です。
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「黒衣の刺客」は、カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で監督賞を受賞、日本公開は、カンヌで上映された作品より少し長いディレクターズ・カットの日本オリジナル版(妻夫木聡演じる船の難破で生き残った遣唐使が
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炉端で望郷するシークエンスを挿入)です。
映画は、中国の唐時代末期を舞台にした時代劇で、台湾の人気女優である舒淇(スー・チー 1976~)演じる主人a0212807_19172519.jpg公の女刺客(暗殺者)が、従兄であり元許婚(いいなづけ)の藩王(張震チャン・チェン 1976~)を暗殺するよう女道士(密教の道士)から命じられるところから始まり、藩王の一命を奪う寸前その命に背むき、人を殺す虚しさから山を下り、生き残った遣唐使を日本に帰国させるため新羅まで送るところで終わります。
a0212807_19181225.jpg映画は、時代活劇(剣劇映画)ながら主人公の女刺客が、丁々発止活躍する派手な格闘シーンや激しい剣劇シーンは、少なく(というよりほとんどなく)、静謐な室内、山間(やまあい)の風光明美な景色、さらに自然豊かな風景を絵画的な構図で美しく撮った映像ドキュメンタリーのようです。
物語の展開についても侯孝賢監督は、そのシーンの顛末について‘余計な説明を一切しない’で、次のシーン
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に移る演出で構成していますので見ている方が、面食らうシーンも多く、中国唐時代の地名、唐時代末期の勢力図、地方藩主・豪族など権力者の相関図などを理解していないとチンプンカンプン‥ともあれ、それは二の次a0212807_19233698.jpgにして台湾の名撮影監督 李屏賓(リー・ピンビン 1954~)のカメラが、捉えた映像は、たとえば、室内に幾重にも掛けられた薄い幕とロウソクの炎の微かな揺れ、窓から射し込む陽の光に映る湯気や煙、風に揺れる木立、鏡のような池の水面にできる水鳥の波紋、山を流れる霧などどれも息を飲む美しさで、さらに陽のある時は、鳥のさえずり、夜になると虫の鳴き声が、いつも聴こ
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え、その音の情感と映像美にどっぷり浸りながら「黒衣の刺客」は、その感性を楽しむ映画と私は思いました。
侯孝賢監督は、小津安二郎監督を尊敬し、藤沢周平の世界を愛しているとか、この映画は、二人へのオマーa0212807_1925866.jpgジュを感じました。
遣唐使の一人であった鏡磨き職人(妻夫木聡 1980~)が、炉端で日本にいる妻(忽那汐里 クツナシオリ 1992~)の舞踏を想い出すシーンで、妻の着ている衣装に少し違和感は、あるものの映画の圧倒的な美しさの前に些末なこと、気にすることもないでしょう。
by blues_rock | 2015-10-02 00:02 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)