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心の時空

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a day in my life

ダブリンの時計職人  シネマの世界<第516話>

アイルランドのダブリン湾に面した海辺の駐車場を舞台に自己喪失した孤独な男女三人が、ひょんなことから出遭い、大事にしている壊れた時計を介して、それぞれの魂(心の琴線)に触れ合い、そして別れて行くという切ない2014年公開のアイルランド映画「ダブリンの時計職人」を紹介します。
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アイルランドの監督タラ・バーン(20年間ドキュメンタリー一筋の監督)、脚本のキーラン・クレイ、撮影のジョン・コンロイと私の知らないアイルランドの映画製作クルー(アイルランドでは有名なのかも?)ながら、なかなかどうして個性的なキャストと併せ見事な出来栄えでした。
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「ダブリンの時計職人」の原題は、「Parked」で‘駐車場に停まっている車’という意味です。
ダラ・バーン監督は、ドキュメンタリスト(リアリスト)としてアイルランド社会の厳しい現実を冷静に見据え、多くの詩人や文学者を生んだ伝統的なアイルランド気風のどこか哀切ながらも凛とした詩情を受け継いだ映像で映画a0212807_925232.jpgを撮っています。
主人公のフレッド(コルム・ミーニイ1953~) は、英国で職業を転々として暮らしていたが失業し、50歳半ばも過ぎて故郷であるダブリンの街に還って来ました。
どんよりと昏(くら)い、冬のダブリン湾に面した海辺の駐車場に車を停めて生活しているフレッドは、職業安定所に失業手当を申請しても住所不定のホームレス扱いでいつも却下されていました。
ある日、孤独なフレッドの隣人として同じく車上生活者のカハル(コリン・モーガン1986~)という青年と知り合いa0212807_9253914.jpgました。
彼もまた愛する母を亡くした喪失感と厳格な父に認めてもらえない悲哀で家出し心身の行き場を失くしていました。
職もなくマリファナとヘロインを常用するカハルは、街のチンピラから借金しているため返済のことでいつも暴力の被害に遭っていました。
人としての矜持(プライド)をもつフレッドは、最初破滅的なカハルを敬遠しますが、カハルの孤独と人間的なやさa0212807_9261357.jpgしさ(コリン・モーガンの哀切な実在感が秀逸)に少しずつ友情を感じるようになりました。
ある日、フレッドは、亡き夫と暮らした街ダブリンでピアノ教師をしているフィンランドの女性ピアニスト、ジュールス(ミルカ・アフロス 1966~)と出遭い一目惚れをしました。
彼女もまた人生に迷い自分の行く末に悩んでいました。
手先の器用なフレッドは、カハルのもっている父親の壊れた腕時計を直してやり、夫が死んだときに止まった
a0212807_9274419.jpgジュールスの置時計を動くようにしてあげました。
フレッド、カハル、ジュールス、三人の抱える深い悲しみは、お互いの心で共鳴しますが、三者三様それぞれに不器用な彼らは、やがて哀しい別れをすることになりました。
イタリアのネオリアリズモ精神を継承したアイルランド・リアリズム映画ですが、哀切なヒューマンドラマの根底にあるアイリッシュ・ソウルと呼びたい詩情は、見る者の心に美しく響きます。
by blues_rock | 2015-09-15 00:15 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)