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心の時空

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a day in my life

わたしに会うまでの1600キロ   シネマの世界<第514話>

a0212807_18343011.jpg乙女チックなタイトルを見て最初少し躊躇しましたが、カナダの名監督ジャン=マルク・ヴァレ監督(1963~ 「ダラス・バイヤーズクラブ」の監督)の新作ということ、リース・ウィザースプーン(1976~ 2005年「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」でアカデミー賞主演女優賞受賞)が、主演していることから映画を見ました。
原題は、「WILD」(野生)、原作者シェリル・ストレイド(1968~)の自叙伝「Wild:From Lost to Found on the Pacific Crest Trail」(作者の徒歩によるPTC1600㌔踏破記録)をリース・ウィザースプーンが、気に入り映画化権を獲得し映画プロデューサーのビル・ポーラッド(「イントゥ・ザ・ワイルド」を製作)と共同で製作しました。
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PCT(Pacific Crest Trail)とは、アメリカ合衆国を南のメキシコ国境からカリフォルニア州~オレゴン州~ワシントン州を経て北のカナダ国境まで南北に連なる山脈の尾根や山間(やまあい)の自然道1600㌔~1700㌔を徒歩a0212807_18385157.jpgで何か月も懸けて縦断するコースのことです。(ざっと鹿児島から青森までの距離を歩く長距離自然道です。)
アメリカの西部にあるこの長距離自然道には、途中酷暑のモハーヴェ砂漠や行く手を阻む標高4000㍍級の山々の尾根、激流の沢、さらに深く積もった雪原があり最終目的地(映画では‘神々橋’)まで踏破するのは、苦難のワザなのだとか‥原作者のシェリル・ストa0212807_1840129.jpgレイド(リース・ウィザースプーン)は、登山の経験もなく山岳地帯を歩いたこともないのに、常に自分を愛してくれた母バーバラ(ローラ・ダーン 1967~)が、45才の若さで病死、その喪失感からくる自虐行為‥子供時代、母親に暴力を振るう酒乱の父親への憎しみ(トラウマ)‥シェリルが何をしても全部許す夫ポール(トーマス・サドスキー 1976~)a0212807_18421163.jpgの愛などから逃避するための自堕落で自暴自棄な生活‥そんな自分への嫌悪感から人生をやり直すために大きく重いリュックを背負い一人でPCTの険しい自然道を歩く旅に出ました。
ジャン=マルク・ヴァレ監督の映画づくりの上手さは、大きなリュックを背負うシェリルが、PCTのワイルドな大自然の中を一人黙々と歩く姿(孤独なa0212807_18425349.jpg旅)をカメラで負いながら次第に変化していくシェリルの心理をフラッシュバックさせ回想シーンとして彼女の過去を時系列に見せていく演出にあります。
やがて明らかになって来るシェリルの過去と母バーバラ(ローラ・ダーン)の存在、どんなに辛く不幸な境遇にあってもいつも楽しそうだった最愛の母を亡くし精神的な喪失感から家出し自暴自棄となりヘロインに溺れ、相手かa0212807_18442117.jpgまわない自虐的なセックスに逃避そして妊娠‥夫のポールは、そんな自堕落なシェリルを許し愛しますが、彼女は、夫から愛されることが苦しく耐えられずに離婚、さらに自虐し自分を破滅に追い込こもうとしていたときPCTを知りました。
シェリルは、自分の心を大自然で癒しながら重い荷物を背負い、砂漠の猛暑とノドの乾き、雪山の厳寒と空腹、恐怖と孤独という苦難の3か月(94日間)をただ一人で歩き続けました。 (下写真:ジャン=マルク・ヴァレ監督と主演のリース・ウィザースプーン)
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撮影監督ワイヴス・ベランガーが、撮ったアメリカ西部山岳地帯の美しい大自然の映像は、黙々と歩くシェリルの孤独を際立たせ、サイモンとガーファンクルの「コンドルは飛んでいく」の美しいハーモニーが、胸に迫りキュンa0212807_1845338.jpgとなります。
劇中、レナード・コーエンやブルース・スプリングスティーンの名曲も流れます。
映画の中でPCTの記録ノートにシェリルが、「私は道になるより森になりたい」の詩篇を記します。
この言葉が、私の心に強く残りました。
by blues_rock | 2015-09-09 00:09 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)