レッド・ファミリー シネマの世界<第528話>
朝鮮半島では、今もなお臨戦態勢を継続しており、一触即発の状態です。
日本は、1945年の敗戦により戦争終結、アメリカ連合軍(GHQ)の占領支配を経て1951年サンフランシスコ講和条約を締結して民主主義の新しい独立国家になりました。
そして戦後70年、世界各地で勃発する紛争や戦争に巻き込まれず、この間平和を享受してきた日本人には、到底、朝鮮民族の隣人同士が、お互い血で血を洗う戦争(骨肉の争い)を続ける朝鮮半島の今を理解することはできないでしょう。
2014年秋、日本公開された韓国映画「レッド・ファミリー」は、いまも韓国のどこかで起きている朝鮮民族の深刻にして悲痛な現実を知る良い機会になるでしょう。
「レッド・ファミリー」は、自らを理想国家と賛美する北朝鮮の悲痛、悲惨な現実とその独善支配による独裁体制が、もたらす不幸の笑うに笑えない ユーモアというには、あまりに残酷な毒の塗られたブラック・コメディ映画です。
映画を見ている者は、大笑いしそうな滑稽なシーンにも素直に笑えず、顔を引き攣らせながらヒリヒリした気持ちで見ていることでしょう。
映画の原案・製作総指揮・脚本・編集を名監督キム・ギドグ(1960~「嘆きのピエタ」)が担い、ギドク監督は、「レッド・ファミリー」の監督に、韓国映画の次世代を担うイ・ジュヒョン監督(1977~)を抜擢、ジュヒョン監督の長編映画デビューとなりました。
映画のストーリーは、‘まさか!?’と思える荒唐無稽なブラックコメディ・タッチですが、前述したとおり朝鮮半島は、今も一触即発の戦争状態なので‘もしかしたら?’、‘ひっとしたらあるかもしれない!’と韓国社会に暮らす人たちにとっては、親しい隣人にも疑心暗鬼となる笑うに笑えないリアルな現実です。
北朝鮮の工作員男女4人は、侵入した韓国社会で表向き‘理想の家族’を演じながら北朝鮮労働党上層部の命令する非情な極秘任務を遂行していました。 (下写真:外では常に笑顔で理想の家族を演じなければならない北朝鮮工作員の4人)
つまらないことですぐに口論する隣人の韓国家族、それに比べ家族を人質にされ会うことも連絡することも許さ
私の知っている出演者は、ベテラン女優パク・ミョンシン(1966~ 「冬の小鳥」の寮母)くらいで、北朝鮮工作員を演じたキム・ユミ(1980~)、チョン・ウ(1981~)、パク・ソヨン(1997~)の若手俳優陣の熱演が、私の印象に残りました。
韓国の映画でハッピーエンドに終わった映画を、まだ一度も観たことがないです。
僕の見るジャンルがサスペンスが多いというのもありますが、ファンタジーの「トンマッコルへようこそ」でも、せつない終わり方をしますしね。
でも、それが韓国の映画の醍醐味なんだと、ついつい観てしまいます。
この映画も、早く観てみたいです。
70年の平穏は、短期的な国家の安寧になり兵器・武器を製造しなくて良い分、ジャパンクールと称賛されるハイテク精密機械類を生み出しました。
いま私が、一番危惧しているのは、自立・自助・自己責任を基本原則とする人としての根幹精神(アイデンティティ)が、弛緩された社会になったことです。
韓国映画が、切なくてヒリヒリするのは(もちろんその数は少ないけれど)喪失した自分のアイデンティティを必死で探究しているプロットにあるのだろうと推察します。
私もj-machjさん同様、ついつい韓国映画を見てしまうのは、日本映画にない(皆無とは言いませんが)切なくてヒリヒリする感覚を求めてかも知れません。
コメントへのお礼のつもりでしたが、駄文長くなりました。お礼まで。