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心の時空

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フレンチアルプスで起きたこと  シネマの世界<第503話>

暑い日が、続く真夏には、冷房の利いた映画館で映画を見るに限ります。
それも季節が、冬の映画、福岡市中洲の大洋映画劇場で現在上映中の「フレンチアルプスで起きたこと」は、物語の舞台が、雪山リゾート地(スイスのスキー場とリゾートホテル)なので暑気払いに格好の映画でした。
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さらに映画のプロットが、ヒンヤリした人間(家族と友人)関係なので気持ちもまた涼しくなりました。
映画は、フレンチアルプスのスキー・リゾート地で起きた予期せぬ出来事を発端に、偶然そこに居合わせた人たち‥傍目(はため)に見たら幸せな家族、仲の良い夫婦、恋愛中のカップルが、その出来事をキッカケに、心にa0212807_9462827.jpg芽生えた相手への不信(心の亀裂)をこれでもかと云わんばかりに描き、それを見ている方の気持ちも次第にヒンヤリしてきますので暑気払いには、ピッタリの映画です。
監督・脚本は、スウェーデンの異才リューベン・オストルンド監督(1974~)です。
長編映画の監督になる前、スキーを中心としたドキュメンタリー映像監督だったとか、そのキャリアは「フレンチa0212807_9481281.jpgアルプスで起きたこと」の数々の名シーンに生きています。
とくに雪山のロングショットやゲレンデを映す固定カメラの長回し映像は、突然流れるヴィヴァルディの「四季~夏」、雪崩(ナダレ)防止のため積雪を減らす装置の大音響、リフトの軋む音と相俟って映画を見る者の気持ちに不気味な不安感と不穏な緊迫感を与えます。
映画を貫く不気味さと不穏さこそオストルンド監督のネライだろうと推察します。
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「フレンチアルプスで起きたこと」の原題(スウェーデン語タイトル)は、「Turist 観光客」で、スウェーデンからフレンチアルプスを訪れた観光客一家4人が、映画の主人公です。
トマス(ヨハネス・バー・クンケ 1972~ その‘情けなさ’が上手い)とエバ(リサ・ロブン・コングスリ 1979~ 次第にa0212807_9512321.jpg顕わす‘イヤミな女’ぶりがいい)夫婦、ヴェラとハリー姉弟(クララとヴィンセント・ヴェッテルグレンの実姉弟、ハリーを演じた弟ヴィンセントの演技が秀逸)の一家4人は、5日間のスキーバカンスのためにフレンチアルプスを訪れました。
2日目の昼、ホテルのテラスで食事をしていると山の彼方で発生した人工雪崩が、勢いを増して一家4人に迫ってきました。
突然の予期せぬ出来事にテラスの観光客は、雪けむりに包まれ、阿鼻叫喚の大騒ぎになりました。
a0212807_9543210.jpg観光客に被害はなかったもののトマスは、突然のことに妻エバと娘ヴェラ、「パパァ!パパァ!」と恐怖で泣き叫ぶ息子ハリーを置き去りにして、自分が一番真っ先に逃げていました。
それからと云うものエバ・ヴェラ・ハリー家族3人のトマスに対する態度が、一変しギクシャクし始めました。 (上:証拠を見せられ動揺するトマス、下:泣き真似するトマスとソッポ向くエバ)
トマスは、父親・夫・男なら命懸けで家族を守るべきと頭で分かっていますが、突然の出来事で家族を置いて
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とっさに逃げた行動(失態)を認めようとせず家族に言いわけばかりしました。
それまで良妻賢母(のよう)であったエバも次第にヒステリックになり自分の感情を抑制できなくなりました。
オストルンド監督の人間誰もがもつ根源的なエゴイズム(こちら参照)への洞察と鋭い(シリアスな)人間観察はa0212807_9562186.jpg「フレンチアルプスで起きたこと」を秀でたブラックコメディ映画にしました。
「フレンチアルプスで起きたこと」は、カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で審査員賞を受賞、この映画の優れたブラックコメディの感性が、アメリカ国内では‘口コミ’で広がり、アメリカの主要15の映画祭において批評家協会賞(外国語映画賞)を受賞しました。
オストルンド監督の演出は、映画に脇役として登場する共演者(ホテルで知り合う年の離れたカップル、エバの
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知人女性、ホテルの清掃員、バスの運転手など)や小道具(ハリーのドローン、お揃いの電動歯ブラシ・スキーウェアなど)の細部にも行き届き、それをシャープな映像で捉えたスウェーデンの若手撮影監督フレデリック・ウェンツェル(1978~)の撮影技術も秀逸です。
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「大惨事のあと多くの生存者カップル(夫婦または恋愛中の男女)が別れている」というオストルンド監督のシニカルな視点による次の映画が、楽しみです。
by blues_rock | 2015-08-10 00:10 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)