フランスと韓国の共同製作2009年映画「冬の小鳥」(原題 Une vie toute neuve 新しい人生)は、韓国系フランス人の女性監督ウニー・ルコント(1966~)が、9才のとき韓国の孤児院からフランス人里親の養女になった自伝を自ら映画化した初監督作品です。
劇映画というより大好きな父親からカトリックの孤児院に預けられた(捨てられた)9才の少女に密着したカメラが、頑なに父親の迎えを待ち続ける女の子の姿を淡々とドキュメントで撮った‘映像叙事詩’のようです。
ウニー・ルコント監督が、初めて撮った映画ながら、シーンごとの情感を静かに表現した丁寧な演出は、実にすばらしく、主人公の少女ジニを演じた映画初出演のキム・セロン(2000~ 「
アジョシ」・「
私の少女」)が、この時
まだ9才ながら女優として生まれて来たような天才的な演技を見せています。
映画冒頭の父親と一緒のときに見せる幸せそうなジニの喜びの表情、その父親から孤児院に連れて来られた
戸惑いと置き去りにされた(捨てられた)悲しみ、じっと耐えて父親を待ち続ける喪失感、孤独な孤児院での寂しさ、納得できない現実の一切を拒絶する怒り、やがて諦め現実を受け入れフランスへ養女に行く覚悟を決める
までの感情を9才のキム・セロンは、目の表情で見事に演じています。
ルコント監督演出のすばらしさは、前述したとおり主人公の少女ジニ役のキム・セロン始め、孤児院にいる子供
たちが、皆一様に自然な演技をしているところ、屈託のない純真な子供らしい存在感(リアリズム)に溢れているところです。
それをしっかり捉えた撮影監督キム・ヒョンソク(プロファィル不詳、「私の少女」の撮影監督)のカメラワークも秀逸でした。
前述しましたとおり「冬の小鳥」は、清楚な‘映像叙事詩’なので、ぜひ映像詩としてご覧いただきたいと思います。
(右写真 : ウニー・ルコント監督)