マップ・トゥ・ザ・スターズ シネマの世界<第507話>
クローネンバーグ監督の新作「マップ・トゥ・ザ・スターズ」(2014年12月日本公開)もまた毒を孕(はら)んだ不条理コメディ‥というか、‘ハリウッド’を辛辣に風刺した(おちょくった)ボディ・ホラーを想わせるシリアスなコメディ映画です。
この新作映画「マップ・トゥ・ザ・スターズ」は、クローネンバーグ監督が、初めてアメリカ(ハリウッド)に進出した記念すべき映画ながら、そんなことなどお構いなくビバリーヒルズで優雅に暮らすセレブ一家の崩壊を皮肉たっぷり辛辣に描いています。
脚本もハリウッドで元リムジン運転手として働いていた脚本家ブルース・ワグナー(1954~)が、その実体験をもとに書いていますので、劇中に登場する奇異な出来事(エピソード)も‘きっとそうだろうな’と妙に納得いたします。
主演のジュリアン・ムーア(1960~)が、今や落ち目の中年女優ハヴァナを名演、伝説の名女優と言われた母親の亡霊が、女優ハヴァナの心から離れず亡き母への怨恨に日々苦しんでいます。
名女優ジュリアン・ムーアの凄みのある怪演が、何と言っても最大の見どころで、ジュリアン・ムーアは、この映画でカンヌ国際映画祭最優秀女優賞を受賞、これでベルリン・ヴェネツィアと併せ世界の三大映画祭で最優秀主演女優賞を受賞したことになります。
クローネンバーグ監督は、落ち目の中年女優ハヴァナに関わる登場人物たちもまた不可解なボディ・ホラーを有する人物として描いており、これ以上は、ネタバレになりますからストーリーの骨子(ポイント)だけにしておきます。
セレブ専門のセラピストをしているワイス博士(ジョン・キューザック 1966~)は、ステージママの妻クリスティーナ(オリヴィア・ウィリアムズ 1968~)、名子役として人気のある息子ベンジーの三人とビバリーヒルズの豪邸で優雅に暮していました。
ある日、長女アガサ(ミア・ワシコウスカ 1989~)が、フロリダの精神科施設から退院、突然ハリウッドに戻ってきたことでワイス家幸せの歯車は、大きく狂い始めました。
アガサの顔と体には、ひどい火傷の痕があり心にも深い闇を抱えていました。
アガサの出現に狼狽した父ワイス博士は、妻でありアガサの母クリスティーナとともにアガサと会うことを拒絶し
アガサは、父ワイス博士のセラピー患者である女優のハヴァナに接近、言葉巧みに彼女の秘書になりました。
ミア・ワシコウスカが、この精神疾患をもつワケありの長女アガサ役を好演、「イノセント・ガーデン」の主人公インディア役といいミア・ワシコウスカは、サイコパス(精神病質)な雰囲気を不気味に表現できる名女優です。
撮影のピーター・サシツキー(1941~ イギリスの撮影監督)、音楽のハワード・ショア(1946~ カナダの作曲家)は、クローネンバーグ監督作品の常連組、いつも変わらぬ安定した実力を発揮しています。