ブログトップ | ログイン

心の時空

yansue.exblog.jp

a day in my life

私の少女  シネマの世界<第485話>

a0212807_1994595.pngこのところ世界の映画界で女性監督が、大活躍しています。
韓国の新鋭女性映画監督チョン・ジュリ(1980~ 現在35才、左写真)の長編デビュー作「私の少女」(原題「ドヒや」、ジュリ監督のオリジナル脚本)もその一つ、福岡市天神のKBCシネマでただ今上映中なので映画好きの方にイチオシでお薦めいたします。
映画は、登場する人物たちの‘孤独感(寂寥感)’を軸にしたプロットで、女性監督のチョン・ジュリ、主人公二人の女性(一人は少女)を演じた韓国の名女優ぺ・ドゥナ(1979~ 「空気人形」・「リンダ リンダ リンダ」)と天才子役(少女俳優)キム・セロン(2000~ 2009年「冬の小鳥」映画初出演、「アジョシ」)、この‘女性三人’の才能が、融合して創りあげた秀作映画です。
主人公の女性二人に暴力を振るう酒乱の男という憎まれ役(準主役)でソン・セビョク(1979~)が、出色の悪態というか演技を披露しています。
映画は、韓国(朝鮮半島)の南端ヨス(麗水)を舞台に、もうこれ以上逃げ場のない海沿いの寂れた集落で日常的に起きる様々な事件‥子供への家庭内暴力(児童虐待)、同性愛女性警察官に対する韓国社会の差a0212807_19152538.jpg別、出稼ぎ外国人労働者(不法滞在者)への暴行など人権蹂躙(じゅうりん)が、問題とならない韓国の社会の暗部を見せながら展開していきます。
私が、チョン・ジュリ監督の長編映画監督デビュー作品「私の少女」を見てジュリ監督の非凡なところを感じたのは、因習的な韓国社会の現実を声高に非難するような反体制的な映画にするのではなく、閉塞した人間社会で孤立した二人の女性が、寄り添うように生きる姿を淡々と描いていることです。
ジュリ監督もインタビューで「最大限淡白に、黙々とそのままを見ていただければと思います。」と答えていました。
同性愛を理由にソウルからヨスに左遷され孤立無援のエリート女性警察官ヨンナム(ぺ・ドゥナ)は、絶望的な孤
a0212807_19163031.jpg
独の中で、幼い時から祖母と義父に虐待され生き抜くための魔性を自然に身につけ小さな怪物となったドヒ(キム・セロン)という孤独というものを未だ知らない少女と出遭います。
a0212807_1918272.jpg
この二つの‘孤独’が、激しく共鳴したときヨンナムとドヒの人生は、動き始めました。
映画は、エリート警察官であったヨンナムが、同性愛を理由に左遷され、辺鄙な過疎の村にある小さな警察のa0212807_19211444.jpg署長として赴任する途中、何かに怯えたような少女ドヒに出遭うところから始まります。
母に捨てられ祖母と義父から虐待され村の子供たちのイジメに慣れた孤独な少女ドヒは、初めて助けてくれた大人のヨンナムを強く慕うようになりました。
a0212807_19252970.jpgソウルで同性愛を非難され愛そのものに臆病となったヨンナムは、次第にドヒの無垢な愛情すら拒否しドヒを避けるようになりました。
ぺ・ドゥナの憂いをおびた大きな瞳とキム・セロンの儚(はかな)げな表情‥二人の孤独が、醸し出すこの情感こそジュリ監督が、映画で伝えたいメッセージ「逃げ場のない孤独な人たちをどうか見捨てないでください」を表現していると思いました。
a0212807_19271372.jpg撮影監督キム・ヒョンソク(プロファィル不詳)の海風の湿気やオゾンの匂いもする映像が、またすばらしく、映画の舞台となったヨス(麗水)の風景は、九州に近いこともあって、どこか九州の小さな海沿いの集落に似た雰囲気をもっています。
ある雨の夜、義父から暴力を受けたドヒが、傷だらけでヨンナムのアパートを訪ねてきました。
a0212807_19285250.jpg虐待による傷痕も痛々しいドヒを助け、自宅に保護したヨンナムは、逆に性的児童虐待の嫌疑をかけられ逮捕されました。
ドヒは、自分のために逮捕されたヨンナムを救おうとそれまで一方的に虐待されるだけのか弱い少女から小さな怪物に変身、無垢ながらも悪魔のような選択(スリラー映画のよう)をしました。
映画は、雨の中、助手席にドヒを乗せたヨンナムの車が、村を出て行くシーンで終わります。
ここだけが、映画の中で唯一見る者の心に安堵感を与えるシーンながら、ジュリ監督は、二人に希望を与えるだけのエンディングにしないで二人の人生に待ち受けてるであろう前途多難な未来も予感させて終わりました。
「私の少女」の公式サイト: こちら
by blues_rock | 2015-06-15 00:15 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)