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猟人日記  シネマの世界<第493話>

猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_19425537.jpg久しぶりに「猟人日記」(2005年作品、原題「ヤング・アダム」)を見ました。
映画の冒頭から見る者の気持ちを不穏にさせる音楽が、静かに流れ、川面を泳ぐ白鳥と川底に散乱した廃棄物を映していたカメラは、水中から波に揺られて水面を漂う若い女の水死体を捉えます。
「猟人日記」は、見るたびに映画のディテール‥脚本・演出・演技・撮影・音楽は、言うに及ばず、ラインプロダクション・編集などに新しい発見があり、新鮮な感動を覚える傑作映画です。
原作は、スコットランド、グラスゴー出身のビートニク(ニューヨークで生まれたアナーキーでアンチモラルの芸術運動)作家アレグザンダー・トロッキ(1925~1984)によるエロティック(発刊当時ポルノ扱い)にしてサスペンスタッチのミステリー小説「ヤング・アダム」です。
猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_19441442.jpg監督と脚本は、同郷の映画監督デヴィッド・マッケンジー(1966~ )、音楽のデヴィッド・バーン(1952~ ニューウェイブ・ロックバンド「トーキングヘッズ」、「きっと ここが帰る場所」の音楽)もスコットランド出身、主演もスコットランドの俳優ユワン・マグレガー(1971~ 「ベルベット・ゴールドマイン」・「ステイ」・2010年「ゴーストライター」など主演)で彼は、自らを‘スコットランド人’と云い、さらに共演のピーター・ミュラン(1959~ 2013年「ビトレイヤー」出演)もスコットランド出身の俳優猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_19445957.jpgですからスコットランドを舞台にした映画「猟人日記」は、スコットランド人によるスコットランド映画と云って良いでしょう。
スコットランドのクライド川をグラスゴーからエジンバラまで往来する平底荷船(バージ)に住込み労働者として作家志望の青年ジョー(ユワン・マグレガー)は、人の良い船主レズリー(ピーター・ミュラン)に雇われていました。
猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_19465668.jpgある日の朝、ジョーとレズリーは、クライド川に浮かぶ半裸の若い女性の死体を発見しました。
その日からジョーは、船主レズリーの妻エラ(ティルダ・スウィントン 1960~ 2014年「グランド・ブダペスト・ホテル」マダムD役で出演)に激しい欲情を抱くようになり、エラを積極的に誘惑しました。
猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_19523051.jpgエラは、ジョーの誘惑に最初戸惑いながらも、狭いバージでの閉塞した暮らしの倦怠感と欲求不満でジョーを受け入れ、夫レズリーの目を盗んでバージの中でセックスするようになりました。
エラを演じるイギリスの女優ティルダ・スウィントンが、実にすばらしく‥エラのモラルが、性欲に屈する瞬間のエロティックな表情、性フェロモン溢れる表情を演じれるティルダ・スウィントン猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_201465.jpgは、名女優の一人と思います。
映画は、若い女性の水死体を巡ってミステリアスに展開、さらにポルノっぽいシーン(R18指定)も交え、ジョーの回想をカットバックさせながら誰も知らない彼の過去が、陰鬱なタッチで描かれていきます。
ジョーにとって出遭った女たちとのセックスは、人生の倦怠から免れるため、性欲処理のため、虚無的な彼に猟人日記  シネマの世界<第493話>_a0212807_2021086.jpgとって生きることは、人生に何も求めないことでした。
ジョーと同棲するキャッシーを演じるイギリスの女優エミリー・モーティマー(1971~ 「ラースと、その彼女」)が、重要な役どころで好演しています。
イギリスBBCの映像カメラマンであった撮影監督ジャイルズ・ナットジェンズ(1961~)が、撮影した‘沈鬱な色調’の映像は、1940年代のスコットランド、グラスゴーの保守的で貧しく、ストイックな暮らしの中で蠢(うごめ)く欲求不満の女たちが、心理的に抱える欲情を妖しくリアルに表現しており、この映画「猟人日記」を名作にした貢献度は、大きいと思います。
by blues_rock | 2015-05-21 00:01 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)
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