フォンターナ広場 ~ イタリアの陰謀 シネマの世界<第483話>
事件の背後にイタリア政府(内務省情報局)、軍警察、右翼組織(ネオファシスト)、共産主義の活動家、鉄道組合のアナキストたち、さらにNATO軍やCIAなどが絡み、東西冷戦当時のイタリアにうごめく政治の闇をミステリアスに描いています。
この映画の原案・脚本・監督マルコ・トゥリオ・ジョルダーナ(1950~)は、全国農業銀行爆破テロ事件時、フォンターナ広場にいて事件を目撃したそうです。
映画には、爆弾テロ事件の真相をめぐりイタリア大統領・首相・外務大臣・内務省情報局など政府首脳ほか極右組織と裏で通じる政府要人、軍警察、ネオファシスト、共産主義活動家、鉄道組合のアナキストたちなど関係者が、次々と登場しドキュメンタリー・タッチでテンポ良く展開(‥複雑な相関関係なので誰がどのような人物か、スクリーンで一応字幕の説明はあるものの当時のイタリア政治に明るくないと分かり辛い)していきます。
警察の捜査当局は、爆弾テロの犯人を左翼運動の過激派と断定、直ちにアナキストと見なされる人物たちを容疑者として逮捕、その一人アナキストの鉄道員ジュゼッペ・ピネッリ(ピエルフランチェスコ・ファビーノ1969~)は、自分の身の潔白を主張しますが、受け入れられず取調室の窓から原因不明の転落死をしました。
イタリアのメディアは、警察発表の取調中に起きた容疑者飛び降りによる転落事故死に疑惑を抱きました。
鉄道員ジュゼッペ・ピネッリの死因は、果たして自殺か他殺か単なる事故死なのか、現場捜査の指揮官カラブレージ警視(バレリオ・マスタンドレア 1972~ 真相と正義を愚直に追い求めるカラブレージ警視役を好演、彼のラストが悲しく切ない)は、全国農業銀行内で発生した爆弾テロ事件(爆破に威力のある軍のTNT火薬が使用されていた)を左翼過激派の仕業と思っておらず容疑者ピネッリの無罪主張を信用していました。
事件の捜査に当たっていたカラブレージ警視は、やがてイタリア政府も裏で関わる陰謀ではないかと思い始めました。
カラブレージ警視が、上司の内務省情報局副局長に自分の見解を述べると副局長は、あっさり事件の真相(政府首脳も知るCIAとNATO軍の謀略作戦=右翼組織ネオファシストを使った反共破壊工作)を語り、事件lの隠蔽を認めました。
それを聞いたカラブレージ警視は、愕然とし捜査終了次第、警察を辞めることにしました。
映画は、最後に「ファンターナ広場の虐殺に犯人はいない。事件の33年後すべての容疑者が無罪となった。」とクレジットされて終わり、映像も終始トーンを落とした色調と相俟って映画を見る私の感情が、カラブレージ警視の心情と重なり、より一層やり切れない気持ちになりました。