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心の時空

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ミッシング・ポイント  シネマの世界<第451話>

a0212807_1030569.jpgインドの女性監督ミーラー・ナーイル(1957~)のメガホンによる2013年イギリス・アメリカ・カタール合同製作映画で、ナーイル監督の硬派な演出は、女性とは思えず、毅然とした骨太な感性で現代文明を厳しく批判、世界の閉塞的な現状と国際社会の病巣を鋭く切り取ったシニカル(冷笑的)な優れた映画を撮りました。
この映画は、ヴェネチア国際映画祭のオープニング作品ながら情けないことに日本では劇場未公開扱いの作品です。
映画のタイトル「ミッシング・ポイント」の原題は、「The Reluctant Fundamentalist」で、Reluctantの意味が分からないので辞書で調べてみたら「気乗りのしない、いやいやながら、しぶしぶの」と訳されていました。
つまり原題を直訳すると「気乗りのしない(しぶしぶ、いやいやながらの)原理主義者」という意味です。
映画のプロットは、アメリカの9.11同時多発テロを社会的背景に人間の原罪である偏見と暴力、貧困と富裕、民族対立(人種差別)、宗教対立(原理主義)などが、いとも簡単に‘憎悪と復讐’の連鎖地獄に堕ちて行くことを描いています。
a0212807_22423427.jpg映画は、冒頭パキスタンでアメリカ人のレニア大学教授が、路上で拉致されるところから始まります。
CIAは、パキスタン人のチャンゲス教授(リズ・アーメッド‥ プロファィル詳細不明ながら理知的な顔立ちは好感)が、レニア教授と親しく、背後で関与していると睨み、CIA現地工作員ボビー(リーヴ・シュレイバー 1967~)にジャーナリストを装わせ、レニア教授誘拐事件のa0212807_10424235.jpgインタビューと偽ってチャンゲス教授に接近させました。
チャンゲス教授は、ボビーが、CIA工作員と察知しながら「自分の話を全部聞く」ことを条件に応じました。
ここから映画は、アメリカに留学した当時のパキスタン人学生チャンゲスにカットバックします。
a0212807_10432111.jpgアメリカン・ドリームの野望に燃えるチャンゲスは、優秀な成績で大学を卒業、ニューヨークの投資会社でエリートとして働き、有能な上司クロス(キーファー・サザーランド 1966~)の片腕として出世していきました。
投資会社会長の姪でアート・カメラマンのエリカ(ケイト・ハドソン 1979~ 「あの頃ペニー・レインと」に出演)という恋人もでき、チャンゲスの人生は、順風満帆に見えました。
a0212807_10434989.jpgそんな時、アメリカで 9.11同時多発テロが発生、この日からチャンゲスの人生は、暗転しました。
チャンゲスは、アメリカに住むほかのイスラム教徒同様、偏見によるいわれのない差別、陰湿な嫌がらせ、ニューヨーク市警察やFBIからは、人権無視の不当な迫害を受けました。
チャンゲスは、自分のアメリカン・ドリーム(金融業界での成功)が、貧困にあえぐ人々や社会的弱者を人間と思a0212807_10443467.jpgわない非情な仕事に思え、そして悩み考えた末に投資会社を辞め、恋人のエリカとも別れ、パキスタンに帰り、レニア教授の推薦で大学教授として働き始めました。
教授となったチャンゲスは、大学で祖国パキスタンの未来を担う若い学生たちに自尊心と国を愛する心を教えました。
a0212807_1053451.jpg学生の間で人気の高いチャンゲス教授に目を付けたパキスタンのイスラム原理主義指導者は、彼を利用しようと組織への協力を求めてきました。
だが、チャンゲスは、彼らの‘イスラム’原理主義が、アメリカの‘拝金’資本主義と同じ傲慢なもので、自分の偏狭な主義主張を無理やり他人に押し付ける愚かなものに思え協力を拒否しました。
a0212807_2314954.jpg映画のラスト、チャンゲス教授が、ボビーの銃の暴発で亡くなった教え子サミアの葬式で「報復をしてはならない」とサミアの家族からのメッセージを伝えるシーンは、感動しました。
ボビーもイスラム原理主義の若者に撃たれ搬送された病院でチャンゲス教授のインタビューテープを聞き「見た目と違ってアメリカを愛している」と語る彼の言葉に耳を傾けていました。 (上写真 : 撮影中のミーラー・ナーイル監督)
by blues_rock | 2015-02-16 00:06 | 映画(シネマの世界) | Comments(0)